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しおりを挟む数か月が過ぎ、カトリーヌは女の子を出産した。
「え!?男じゃないの?」
子供を産んだカトリーヌの第一声はそれだったらしい。
兄ならば、性別がどちらでも喜んだに違いない。
嬉しそうに抱いて、カトリーヌに感謝したことだろう。
その後、侍女が赤子を母に手渡そうとしたのに、父が横から手を伸ばして奪い取った。
母は呆気に取られていたが、ケビンも同じ思いだった。
ひと月前に入籍したからといって夫のケビンが最初に抱くのは変だが、父も変だろう。
カーマイン伯爵は母なのだから、血筋を受け継いだ赤子をカトリーヌの次に抱くのは母ではなかろうか。
やはり父とは考え方が合わない。
ケビンが屋敷に戻ってから、父はやたらとカトリーヌの肩を持つと思っていた。
それはおそらく、カトリーヌが兄ルシオの子を妊娠しているから大切にしていたのだろう。
ケビンがそう思った通りだった。
「この娘がカーマイン伯爵家の跡継ぎだ。」
兄が生きていれば、この子が継ぐことになっていたのだから異論はない。
だが、父の次の言葉には腹が立った。
「ケビン、お前は飛ばす。シェイラの次はこの娘だ。」
「は……?飛ばす?」
母シェイラの次の伯爵が、この赤子?
どうしても伯爵になりたいわけではないが、これは理不尽ではないか。
「兄上の娘が伯爵になることは認めますが、俺が中継ぎになるんじゃなかったんですか?」
そのために、騎士を辞めて戻ってきたんだ。
「お前が伯爵になる必要がどこにある?お前が伯爵位を渡さず乗っ取るかもしれないだろうが。」
「乗っ取るって、俺もカーマイン家の息子ですが?」
まるで、俺がこの伯爵家とは他人なのに、伯爵になるような言い方をするじゃないか。
産まれたこの娘が、成長して権利を主張してくるならわかるが、父がそんな言い方をするのは腹立たしい。
兄は母似だった。
自分は父似だ。
両親の子であることを疑ったことなどなかった。
兄より好かれていないことはわかっていたが、ここまでとは。
母を見ると、父の言葉にオロオロしている気がした。
この赤子が伯爵位を継げるようになるのは18歳だ。
つまり、あと18年は母が伯爵のままということになる。
現在44歳の母は62歳まで引退できなくなるのだ。
人生65年の昨今、遅くとも50~55歳までには子供に爵位を譲り、隠居するものであるというのに。
仕事を押し付けられることは、領地領民のことを思うと、まだまあ許せる。
しかし、あと18年も、両親と顔を突き合わせて同居しなければならないことの方が苦痛かもしれない。
母が50歳になる頃にはケビンが爵位を継いで、両親は領地で隠居するだろうと思い、それまでの我慢だと思っていたが、逃げ出したくなってきた。
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