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しおりを挟む兄が使っていた執務室の机の上は、山積みにされた書類でいっぱいだった。
どこが、父一人でも問題なかったのだろうか。
「お前はアレを何とかしろ。できたものから渡しに来い。」
「……わかりました。」
ほとんどの書類は領地で纏めてくれている月々の報告だが、領地内のあちらこちらから修繕だの要望だの苦情だのが届いており、どこに予算をかけるか、どこを早急に対応するべきかの検討が必要になる。
数か月ごとに領地を訪れて話し合いをすることになるが、事前に把握していなければならない。
高齢の祖父に代わり、兄がしていたのだろう。
父はそんな面倒なことはしたくないから、自分が行くこともなければ考えることもしないから。
伯爵は母だが、その夫である父も、領地領民に親身ではないことはわかっていた。
まさか、三か月の間、何も処理されていないのだろうか。
月々の収支すら、父は纏めていない気がする。
ケビンはため息をついてから、一つずつ書類を捌いていった。
久しぶりに会ったカトリーヌのお腹は少し膨らんでいる気がした。
あと四か月ほどで産まれるらしく、そのひと月前にケビンはカトリーヌと入籍することになる。
カトリーヌはまだ兄を思って悲しんでいるかもしれない。
そう思うと、自分との結婚の話をする気にはなれなかった。
どの道、入籍するといってもお腹に子がいるため、閨を共にするわけではない。
出産を終えれば、徐々に夫婦らしくなっていけるだろうか。
想像できない。
「絶対、男の子だと思います。」
カトリーヌはお腹に手を添えて、母にそう言っていた。
「だといいわね。でも女の子も可愛いと思うわ。ケビンとの間にできる子供も楽しみね。」
母には悪気があったわけではないだろう。
しかし、カトリーヌは泣き出した。
「わ、私は、ルシオ様とのこの子を、大切にしたいのに、お義母様は、そう思わないのですねっ!」
母は目を丸くして驚いていた。
「なんてひどいことを言うんだ!!カトリーヌに謝れっ!!」
「え……!?何かおかしなことを言ったかしら。」
父の剣幕に、母だけでなくケビンも驚いた。
母は別に間違ったことは言っていないだろう。
子供は二人産むことを推奨されているのだから、カトリーヌはケビンの子も産むことになる。
ただそうなるであろう未来を語っただけだ。
非があるとすれば、兄が亡くなってまだ三か月しか経っていないことか。
まだ気持ちが割り切れていないのに、他の男の子供も産めと言われて、傷ついたといったところだろう。
しかし、それならばわずか半年後の入籍を受け入れるのもどうかと思うが。
それに、カトリーヌの言い方では、兄の子しか産まないと言ったようにもとれるのに、父が激昂したのも不思議だった。
父が泣いているカトリーヌを支えて部屋を出て行く。
ケビンは母と、一体何だったんだ?という思いで首を傾げていた。
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