友人の恋が実りますように。

しゃーりん

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アマディオとセレンティアが両想いかどうか。

それはこの際、突き止めるべきではない。

セレンティアにアマディオへの気持ちを確認した上でフレデリックとの婚約解消を望んでしまえば、浮気と言われても反論できなくなる。

ただ単に、セレンティアがフレデリックとの結婚を望んでいるか、いないか。

望んでいないのであれば、アマディオとロックスの二人と友人として一緒にいることでフレデリックが誤解して婚約解消を言い出すのを待つ。

フレデリックが婚約解消を口にしない限り、国王陛下の決めたこの婚約を無くすのは難しいようだ。


それを聞いた時、クラリーチェは密かに思った。

『フレデリックはセレンティアのことが気になっているので婚約解消しないのではないか』と。 

婚約者候補の中にフレデリックが望む令嬢がいたにも関わらずセレンティアが選ばれたことで、フレデリックはセレンティアに嫌がらせのようなことを繰り返している。

一人になったセレンティアの前に姿を見せては幼稚な言動を繰り返している。

それがクラリーチェには『自分に感情を見せてほしい』というフレデリックの潜在意識の現れなのではないかと感じるのだ。

フレデリックの好みでなかったはずのセレンティアを、フレデリックは意識し始めている。

『無』以外の表情を引き出そうとして、空回りしているように見えるのだ。 


アマディオの言う通り、フレデリックがセレンティアのことを妻として大切にしたとしても一時だけの可能性は高い。
なぜなら、フレデリックが女好きで浮気者であることは間違いないから。

セレンティア一筋になる姿など………………申し訳ないが想像もできない。


ということは、フレデリックがセレンティアを意識していることを自覚する前に婚約解消を言い出すように仕向ける方法は上手くいくかもしれない。


なので、クラリーチェはセレンティアに婚約を解消したいかどうかを聞いてみることにした。
 




「セレンティア様、少しよろしいでしょうか?」

「……ええ。クラリーチェ様、よね?何かしら。」


クラリーチェは気配を薄くすることが上手いせいで誰もが知っている令嬢であるはずなのに久しぶりに会ったような感覚になる不思議な令嬢である。声をかけられなければ認識しづらいのだ。

なのでセレンティアも一瞬、戸惑ったようだ。

物陰に隠れながら、クラリーチェは思い切って聞いた。


「セレンティア様は、フレデリック王子殿下との婚約を解消したいと思いますか?それとも王子妃になることを望んでおられますか?」


セレンティアは瞬きを繰り返した後、暗く笑った。


「面と向かってそう聞かれたのは初めてのことだわ。……家族も私もね、婚約者に決まった時に諦めたの。私は形だけの妻になる。望まれようと子供は産まない。コロコロと変わる殿下の愛人たちに子供を産ませればいい。移り気な殿下に心を許すと傷つくだけ。だから、婚約解消あるいは離婚を切り出される日がいつか来るのを、いつまでもその日を待ち続けるの。」


そう悲しそうに微笑んだセレンティアに心が痛くなった。

可能性があるのであれば、計画を実行しよう。

クラリーチェはセレンティアを誘い、アマディオとロックスが待っている食堂まで連れて行って言った。


「一緒に昼休憩を過ごしましょう。」と。



 
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