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しおりを挟むフレデリックの愛人である下位貴族令嬢たちは婚約者の座にいるセレンティアが邪魔だった。
もうすぐ卒業を控え、フレデリックはセレンティアと結婚してしまう。
フレデリックがセレンティアを嫌っているとはいえ、夫婦になってしまえば女好きのフレデリックはセレンティアを抱くだろう。そうすれば子供ができるに違いない。
そうなってしまえば、いくら自分がフレデリックの子供を産んだとしても正妃にはなれないと思った愛人たちは、結婚前に婚約を解消させなければならないと焦り始めていた。
「フレディ様ぁ、セレンティア様が浮気なさっているのに放っておいていいのですか?」
「……もうすぐ卒業だ。そうすればセレンティアと嫌でも結婚することになる。浮気などできないように離宮に閉じ込めるつもりだ。アイツに自由などやるものか。アイツには一人が似合ってるからな。」
「それならフレディ様の目の届かないところに追いやってしまった方がいいんじゃない?浮気を理由に遠くにある厳しい修道院にでも入れたら孤独なんじゃないかしら。家族にも会えず、男にも会えず。」
「あ、いいかもぉ。夜会とかで浮気する心配もなくなると思いません?今でも男二人を侍らしてるんだもの。私たちはフレディ様一人なのにセレンティア様はベッドで二人を相手にしているんだわ。誰の子供を妊娠するかもわからなくなっちゃいますよぉ?」
「……セレンティアがすでに体まで許していると?まさか。アイツは貞淑だろう?」
「でもぉ、あのアマディオ様ってセレンティア様の昔の恋人だったんでしょ?婚約の話もあったって聞いたことがありますよぉ?その頃に経験済なんじゃないですかぁ?今頃また近づいてきたってことはセレンティア様の愛人になるんじゃないんですかぁ?」
「そうそう。アマディオ様とロックス様はいつも一緒だから男も女もいけるとか。絶対にセレンティア様と三人で楽しんでいると思いますよ。」
フレデリックの側に残った令嬢二人は相手に抜け駆けされることのないように、共にフレデリックに迫るようになったことで閨事は必ずしも1対1でなければならないという考えではなくなった。
男二人に攻められるセレンティアを勝手に想像して、嫉妬している感情まで上乗せされている。
「セレンティアは俺と結婚するのに愛人を持つ気なのか?それも二人?」
「だってぇ、フレディ様もそうでしょ?前はもっといたけど今は私たちだけで嬉しい。」
「私たちはフレディ様しか知らないしね。ってことはフレディ様はあの二人のお古をもらうの?」
すっかり愛人二人の言うことが事実なんだと思い始めたフレデリックは、『お古』の言葉を聞いてセレンティアが汚らわしく感じた。
フレデリック自分が初めての男になるという令嬢しか相手をしてこなかった。
王子である自分に、誰かの手垢のついた女は許せなかったのだ。
それを知っていた愛人たちは、フレデリックにセレンティアがもう純潔ではないと思わせようとしたのだ。
貴族令嬢の純潔を何人も奪っている自分のことを棚に上げて、純潔ではないセレンティアが許せないと思ってしまったフレデリック。
そもそも純潔でなければ王族の婚約者にはなれないのだが、そのことはフレデリックの頭からは消え去っていた。
そしてとうとう、フレデリックは自分の心の奥底の本心とは裏腹に事を起こしてしまう。
もちろんそれは、セレンティアとアマディオが望んでいた婚約解消だった。
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