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しおりを挟む待望の婚約解消は、学園の食堂で言い渡された。
「セレンティア、お前は俺の婚約者でありながら男二人を侍らせて浮気するとは許せない。
お前みたいな純潔ではないふしだらな女がこのまま俺と結婚できると思っていたのか?
お前に俺の子供を産ませるわけにはいかない。托卵されては困るからな。よって婚約を解消する。
本当は婚約破棄にして慰謝料を貰いたいところだが、そこは許してやろう。
ただし、お前のふしだらな性根をなおすに相応しい修道院を紹介してやる。楽しみにしていろ!」
そう言い残してフレデリックは両腕に愛人をくっつけたまま去って行った。
「ツッコミどころが多いが……婚約解消されたな?」
「……ええ。確かに聞きました。」
周りで聞いていた者たちも一瞬、ワッと歓声が上がったが、すぐにシーっと声を潜めた。
婚約解消を喜ぶ声がフレデリックたちに聞こえるのはよくない。
だが、ほとんどの者は祝福してくれた。
「どんな修道院を紹介されるのかしら?」
セレンティアは暢気にそんなことを言った。
「アイツらが行くべきじゃないか?」
アマディオは呆れたようにそう言った。
「男二人と浮気っていうのはそう思わせたかったからだけど、話がぶっ飛んだなぁ。」
ロックスは首を傾げて考えている。
クラリーチェはそんな三人を見ながら、それぞれの親の出番が来るなぁと思っていた。
セレンティアの親は、身に覚えのない娘に暴言を吐いて婚約解消した慰謝料を。
アマディオの親は、息子が婚約者のいる令嬢に手を出したと証拠もないのに侮辱されたことを。
ロックスの親は、アマディオ同様の侮辱と、そして婚約者であるクラリーチェに誤解を与えた精神的苦痛に対する慰謝料を。
それぞれ、王家に言い出すはずだと思った。
なぜならば、フレデリックがセレンティアに言い放った修道院行きなど認められるわけはない。
事実ではないのだし、フレデリックに処罰を決める権限などない。
なので、異議を申し立てるのは当然のことだ。
それと同時に逆にフレデリックの不誠実さを訴え、確実に婚約解消と慰謝料をもぎ取る計画なのだから。
一度口にした婚約解消の言葉を取り消すにしては証人が多すぎる。
それに、『今度王族に相応しくない行いをすれば何らかの罰を与える』と国王陛下が告げたのはフレデリックにだけではなく、セレンティアや迷惑を被りかけたアマディオやロックスの親にも伝えていた。
証拠など有りはしないセレンティアの浮気という言いがかりはフレデリック自身を追い込んだのだ。
そしてクラリーチェの両親は、全てロックスの親に丸投げするだろう。
のほほんとしている両親は大概のことは笑って済ます人種であるため、クラリーチェに関することはロックスとの婚約時からブライト伯爵家に任せっきりなのだから。
ちなみにクラリーチェが自分の気配を薄くするのが上手い理由は、ロックスのためである。いや、ロックスのせいである?
ロックスは溺愛するクラリーチェに話しかける者に威嚇するのだ。
今はマシになったが、学園入学前はひどかった。
なので、話しかけられない努力をした結果、気配を薄くすることができるようになった。
クラリーチェを胸ポケットに入れて持ち歩きたいと言っていたが、横にいることで満足してくれるようになったのである。
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