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しおりを挟む浮気しているセレンティアに婚約解消を突きつけるのは当然のことだとフレデリックは言う。
そんな愚息に呆れながらも、国王陛下は一応確認した。
「では証拠を見せてみよ。いつ、どこで、セレンティア嬢が彼らとどんなことをしていたのだ?お前の他に証人もいて、証明してくれるのであろうな?」
「え……いつ、どこでって。毎日毎日学園で男二人に囲まれた女なんか浮気しているに決まっているじゃないか!証人なんてその辺中にいる。」
「一緒にいる姿を見ただけでは浮気にはならんだろう?学園では委員や役員で男女が行動を共にすることなどよくあることだ。それを浮気と言っていたなら学園生活など男女別にしない限り無理なことだ。」
「だけど、そこのアマディオとセレンティアは昔、恋人同士だったと聞いた。だから愛人になるために最近は近づいて来たに違いないと………」
「誰が言っていたんだ?」
「愛人が、じゃなくて、友人、友人たちが。」
愛人たちが言っていたんだなと誰もが呆れた。
彼女たちに嘘を吹き込まれて婚約解消を言い出したのは明らかだった。
セレンティアは国王陛下に発言の許可をもらい、言った。
「アマディオ様とは幼馴染でフレデリック殿下との婚約が決まる前までは家族ぐるみのお付き合いでした。恋人同士だったことはありません。そして最近は一人の私に声をかけて下さって行動を共にして下さっていただけで二人きりでお会いしたことなどございません。」
「二人じゃない、三人だ!そこのロックスも合わせて三人でまぐわっているんだろう?」
「……………………」
フレデリックの発言を理解することを脳が拒否したのか、思わぬことを言われたせいか、誰も反応を返すことができなかった。
それほどフレデリックの妄想はひどかったのだ。
だが、誰よりも先に怒りを露わにしたのはロックスだった。
「それは僕が愛する婚約者を裏切る行為をしているということですか?そんな覚えは全くありません。
浮気だのまぐわうだの、僕のクラリーチェの前で一度だけでなく二度も三度も言うとは。僕の愛するクラリーチェを傷つけるなど許せません!」
ちょっと待って。話の論点がズレるから。
「クラリーチェ?お前の婚約者か?婚約者を放ってセレンティアに侍っていたお前が悪いんだ!」
「僕はクラリーチェを放っておいたことなどありません!学園では常に一緒にいます。そもそも、僕の友人としてアマディオが、クラリーチェの友人としてセレンティア嬢が一緒にいたのです。僕たちは常に四人で行動を共にしていました。男二人を侍らせるというのは間違いです。」
「そんなばかな。お前の婚約者が一緒のところなど、見たことがない。バレる嘘をつくな!」
みんなの視線がクラリーチェに向く。
そこでようやくフレデリックはクラリーチェの存在を認識した。
「…………えっ?………いたか?」
ええ。初めから。
両陛下と王太子殿下には入室時に挨拶をしたから認識されていた。
だけど遅れて入ってきたフレデリックとは言葉を交わさなかった。
気配を薄くしたまま座っていると、そこにいることを忘れてしまえば認識し辛い令嬢。
それがクラリーチェだった。
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