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しおりを挟むロベルトはどこか地方の領地で騎士になるつもりらしいとアリーシャが両親に伝えると、早く別れろと言われた。
「だから言ったんだ。あいつは将来性がない。伯爵令嬢としてぬくぬくと育ってきたお前に何ができる?苦労をさせたくないという親の気持ちもわかってくれ。縁談を探す。それまでに早く別れるんだ。」
父は本気のようだった。
アリーシャはどうしたらいいか真剣に考えなければならなくなった。
ロベルトは、アリーシャが自分についてくるものだと思っていて、クラスメイトの子爵家や男爵家に雇ってもらえないかと冗談交じりに話していた。
「アリーシャ、本当にロベルト様についていくの?ご両親が認めたの?」
カサンドラが心配そうに聞いてきた。
「両親は許してくれていないわ。縁談を探すから別れろって。」
「私もそれがいいと思うわ。でも、ロベルト様は別れを受け入れないでしょうね。ああやってアリーシャは自分と別れないんだと言いふらしているんだから。」
アリーシャから別れを切り出されないように虚勢をはっているように見えるらしい。
「……私ね、両親を説得してみようと思うの。どこであろうとロベルト様についていけるように、家事も覚えようかと思って。」
「本気!?」
「ええ。彼のことは好きだし、私をこんなにも好きになってくれる人はもういないと思うの。王都だろうが地方だろうが、お互いを思い合っていたら幸せになれるんじゃないかしら。
それに、来年も王立騎士団の試験を受けると言っていたし、王都に戻って来れるかもしれないでしょう?」
ロベルトが王立騎士団に合格する可能性は低いと思う。
しかし、そう言わなければカサンドラは反対しかしないと思った。
「そうかもしれないけど。だけど、本当にロベルト様でいいの?なんだか不安だわ。」
わかる。
実はアリーシャもまだ覚悟が決まっていない。
それでも、別れの機を逃したということは、ロベルトと一緒になる運命だったのだと自分に言い聞かせることにしたのだ。
「駄目だっ!!」
父はロベルトについていくことに頑なに反対していた。
「キール男爵家が次男夫婦に援助してくれると思うか?使用人を雇ってくれなければ、お前が家事をしたり宿舎で共同生活をしなければならなくなるんだぞ?」
地方で働く下っ端騎士の給金など、二人で暮らしていくのがやっとというところだろう。
「家事は今から覚えるわ。跡継ぎになる方と縁がなかった時点でそうしておくべきだったわ。」
アリーシャの伯爵令嬢という身分は、とても微妙だった。
やはり相対数の少ない公爵令嬢や侯爵令嬢は良縁に恵まれやすく、伯爵令嬢は何とか高位貴族との縁を願うが、アリーシャの年代ではそもそも既に既婚者か、婚約者が決まっている跡継ぎがほとんどだった。
早々に結婚を諦めて侍女や家庭教師を目指すのも一つの手であるが、アリーシャはおっとりとしていて誰かに仕えるのは向いていないと思われたことで、騎士や文官との縁を望むつもりでいた。
夫が王城や高位貴族家で職を得ていると、家事は使用人に任せることができるほどの給金が貰える。
娘が苦労しないようにと父は思ってくれているが、アリーシャは何とかなるだろうと思っていた。
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