駆け落ちの事実などありません。

しゃーりん

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6.

 
 
アリーシャは、卒業式の日にロベルトと別れることにした。

卒業する前に縁談のことを話してしまうと、ロベルトだけでなくクラスメイト達からも責められる気がしたからだった。それに耐えられるほど、アリーシャは強くない。

『楽しかった』と笑顔で別れたいが、ロベルトは別れを拒否するに違いない。

だが、伯爵である父の決めた縁談を男爵令息でしかないロベルトが壊すことなどできるはずもなく、そして地方で職を探すことになるロベルトがそうそう王都に来ることはない。

いつか、彼が王都で働けるようになったとしても、その頃にはアリーシャはイザークと結婚しているだろうし、ロベルトも別の女性と結婚しているかもしれない。 
 
一度はロベルトについていこうと思っていたが、まだ職を見つけていない彼を待つよりも先に、父に縁談を決められたアリーシャは、ロベルトとの交際を終わらせる覚悟を決めていた。 

 
 

卒業式が終わり、アリーシャはロベルトに言った。


「ロベルト様、今までありがとう。私たち、お別れしましょう。」

「え……?何、言ってるんだ?」

「縁談の話が来たの。明日、顔合わせをするわ。ごめんなさい、あなたが職を得るまで待てなくて。」

「明日!?でも、俺についてきてくれるって言ったじゃないか!」


アリーシャは、ロベルトに話を合わせてはいたが、ついてきてくれと言われた時に返事はしていなかった。
ただ、その前提で家事を覚えようとしていただけで。 


「じ、実は、職はもう見つけてあるんだ。アリーシャを驚かせたくて黙っていただけで!」

「そうなの!?どこなのかしら?」


もっと早く教えてくれていれば、父がイザークとの縁談を受けることはなかったかもしれないのに。
こんな大切なことは黙っているべきではない。今後の予定もあるのだから。


「ニックのところだ!あいつのところで雇ってもらえることになってるんだ。」


ニック・チェイス男爵令息。
ロベルトの友人の男爵領で働くことになったらしい。

王都からは4,5日の距離?


「来年の王立騎士団の採用試験には必ず受かってみせる。王都に戻ってこられるようにするから、どうか頼む!ついてきてくれないか?」 

 
アリーシャは悩んだ。
縁談の話がなければ、父はロベルトを許してくれたかもしれないから。


「……父に、話してみるわ。それに、来年の採用試験を受けるのだから、私はそれまでここであなたを待つべきだと思うの。じゃないと両親は許してくれないわ。」


ついていくとなると、結婚するということになる。
男爵領でずっと働くわけではないのに、慌てて結婚してついていく必要はないし、両親は認めてくれない。

王立騎士団の採用試験は半年後にある。
高位貴族家の騎士採用も同じ頃に。

どこかに受かれば、王都で暮らせるため、両親も安心できる。


そうなれば、ロベルトとの結婚を許してくれるとアリーシャは思っていた。


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