駆け落ちの事実などありません。

しゃーりん

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14.

 
 
イザークとの婚姻届は受理され、アリーシャ・オリエントになった。

オリエント侯爵夫妻とイザークの兄夫婦にも挨拶に行った。


「この変わり者の息子と結婚してくれるとは。嬉しいよ、アリーシャさん。」

「結婚式はしなくていいの?すぐに領地に行ってしまうなんて。」


イザークは家族に、アリーシャに何度も求婚して断られていると話していたらしい。
アリーシャは学生時代に恋人がいて、彼を忘れる時間が必要で、それを待っているところだということになっていた。

姿を見せないアリーシャを心配した友人のカサンドラにも両親が同じように言い、まるでアリーシャが王都にいるかのようにしていたという。

両親にしろイザークにしろ、アリーシャが戻って来る前提でいたのだ。 


「結婚式は落ち着いたら考えるよ。彼女の気が変わらないうちに入籍して安心したかったんだ。」


イザークは笑顔でそう言った。

次男のイザークは、子爵位をもらっているが、それはアリーシャと結婚するための形だけのものらしい。
領地はこれまで通りオリエント侯爵家が見てくれているのだとか。

イザークは領地で研究をしていて、今後もそれを続けることはアリーシャも聞いていた。
 

「イザークが結婚する気になってくれた時は驚いたけど、まさかストーカーみたいにアリーシャさんを諦めないから逆に嫌われるんじゃないかと心配だったのよ。受け入れてくれてよかったわ。」

「そんな、ストーカーだなんて。」

 
イザークは家族にどういう説明をしていたのか不安になってきた。


「一目惚れしたんだから、努力するのは当然だろう?婚約者がいないから可能性はあると思っていたんだ。アリーシャは優しいから僕に絆されてくれた。僕の戦略勝ちだ。」
 

イザークはアリーシャを見て微笑んだ。
アリーシャは思わず頬が引き攣る。
何が本当で何が嘘なのか、わからない。

わからないが、イザークがアリーシャを望んでいたのは確かだということはわかった。






数日後、アリーシャはイザークと彼が研究で過ごしている領地へと向けて出発した。
 

「部屋は別々にするからね。安心していいよ。」 

「別々に?いいのですか?」


入籍はしたが、まだ閨を共にしてはいなかった。
体の調子が万全ではないことを、イザークは気遣ってくれていた。

領地までの二泊では一緒に過ごすのかと思っていたが、そうではないらしい。


「寝不足にならないほうがいいから。」

「ありがとうございます。」


この時は、宿の部屋を別々にするという意味だとばかり思っていた。 




領地に着き、イザークはアリーシャが妻だと使用人たちに紹介した。


「アリーシャ、ここでは好きに過ごしてくれたらいいから。」

「好きに?お役目とかは?」


女主人としてやらなければならないことは?


「あー……どちらでもいいよ。家令が担っているから、やりたければやってくれてもいい。」
 

イザークは子爵としての役目を放棄しているも同然で研究をしているため、アリーシャもどちらでもいいらしい。

 
「アリーシャの部屋は整えてある?」

「はい。」

「じゃあ行こうか。アリーシャには二階の部屋を用意したよ。僕は三階だから。」
 
「え……?」

 
続き部屋ではないどころか、階も違う?

アリーシャはイザークが何を考えているのかがわからなかった。


 

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