駆け落ちの事実などありません。

しゃーりん

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ロベルトは翌朝、領地に戻るとニックに言い、王都を出発した。
 
エリーが妊娠していることを知らずに呑気に過ごしていた自分に後悔した。

そもそも、ロベルトが半年も王都にいたのはポーラが原因だった。


王立騎士団の採用試験に落ちたロベルトは、エリーが残念がるだろうなと思いながら酒を飲み、チェイス男爵家の宿舎に戻ろうとした。

その途中、男爵家でメイドをしているポーラに会ったのだ。 

ポーラに騎士団を落ちた話をすると、慰めてあげると言われ、木陰に連れ込まれた。そしてズボンを下ろされていきなり口と手で局部を奉仕された。

いきなりのことで抵抗することも忘れて身を任せてしまい、その後はロベルトが彼女を押し倒して欲望を発散させた。

誰かが近くを通るかもしれないという、外での交わりにひどく興奮した。


それから週に二、三度は関係を持っていた。

エリーとは違って積極的なポーラに夢中になってしまったのだ。

ポーラは結婚願望がなく、こうしてよく手近にいる男を誘って関係を持っているという。
だが、同じメイド仲間の夫や恋人には手を出さない。

領地からきた騎士などは、妻には内緒にして誘ってくることもあるのだとか。

それならばロベルトも内緒にすれば大丈夫だと思っていた。

少し遊んだら、もう少し満足したら、エリーの元に帰るから。

そう思い続けて……半年が経っていたのだ。


昨日、ポーラから聞いた話によると、ロベルトはニックの友人だと言って調子に乗り過ぎだとメイドたちからはかなり評判が悪かったらしい。
しかも、採用が決まっていた者を押しのけて自分が職を得たことも知られており、コネ採用が気に入らなかった者の意地悪で手紙を隠したり読んだりして渡さなかったようだ。 

手紙には『妊娠しているから早く帰ってきてほしい』と書いてあったようだ。

メイドたちは、まさかそれが妊娠を知らせる手紙だったとは思っておらず、妻が妊娠していることをロベルトが知っているものと思っていたらしい。

なのに、いつまでも帰らないロベルトを、妻子を捨てるつもりなのかと疑っていたとか。
 

ポーラはメイド仲間の雑談に加わることが少ないため、彼女たちがロベルトを追い出したいと思っていることに気づいていなかったのだ。
  
『もう産まれているかもね』とポーラは言った。

妊娠がわかってから七、八か月くらいで産まれるか、妊娠に気づくのが遅ければ半年くらいで産まれるらしい。

エリーが一人で産んでいるかもしれないと思うと心が痛んだ。
 


五日後、チェイス男爵領に着いたロベルトは、慌ててエリーの待つ家へと駆け込んだ。

しかし、どこにもエリーの姿はない。
見覚えのある部屋のままなのに、もう何か月も生活されていないように思えた。

洗濯物は干したまま。

エリーは、どこだ?


 
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