19 / 40
19.
しおりを挟むロベルトは翌朝、領地に戻るとニックに言い、王都を出発した。
エリーが妊娠していることを知らずに呑気に過ごしていた自分に後悔した。
そもそも、ロベルトが半年も王都にいたのはポーラが原因だった。
王立騎士団の採用試験に落ちたロベルトは、エリーが残念がるだろうなと思いながら酒を飲み、チェイス男爵家の宿舎に戻ろうとした。
その途中、男爵家でメイドをしているポーラに会ったのだ。
ポーラに騎士団を落ちた話をすると、慰めてあげると言われ、木陰に連れ込まれた。そしてズボンを下ろされていきなり口と手で局部を奉仕された。
いきなりのことで抵抗することも忘れて身を任せてしまい、その後はロベルトが彼女を押し倒して欲望を発散させた。
誰かが近くを通るかもしれないという、外での交わりにひどく興奮した。
それから週に二、三度は関係を持っていた。
エリーとは違って積極的なポーラに夢中になってしまったのだ。
ポーラは結婚願望がなく、こうしてよく手近にいる男を誘って関係を持っているという。
だが、同じメイド仲間の夫や恋人には手を出さない。
領地からきた騎士などは、妻には内緒にして誘ってくることもあるのだとか。
それならばロベルトも内緒にすれば大丈夫だと思っていた。
少し遊んだら、もう少し満足したら、エリーの元に帰るから。
そう思い続けて……半年が経っていたのだ。
昨日、ポーラから聞いた話によると、ロベルトはニックの友人だと言って調子に乗り過ぎだとメイドたちからはかなり評判が悪かったらしい。
しかも、採用が決まっていた者を押しのけて自分が職を得たことも知られており、コネ採用が気に入らなかった者の意地悪で手紙を隠したり読んだりして渡さなかったようだ。
手紙には『妊娠しているから早く帰ってきてほしい』と書いてあったようだ。
メイドたちは、まさかそれが妊娠を知らせる手紙だったとは思っておらず、妻が妊娠していることをロベルトが知っているものと思っていたらしい。
なのに、いつまでも帰らないロベルトを、妻子を捨てるつもりなのかと疑っていたとか。
ポーラはメイド仲間の雑談に加わることが少ないため、彼女たちがロベルトを追い出したいと思っていることに気づいていなかったのだ。
『もう産まれているかもね』とポーラは言った。
妊娠がわかってから七、八か月くらいで産まれるか、妊娠に気づくのが遅ければ半年くらいで産まれるらしい。
エリーが一人で産んでいるかもしれないと思うと心が痛んだ。
五日後、チェイス男爵領に着いたロベルトは、慌ててエリーの待つ家へと駆け込んだ。
しかし、どこにもエリーの姿はない。
見覚えのある部屋のままなのに、もう何か月も生活されていないように思えた。
洗濯物は干したまま。
エリーは、どこだ?
952
あなたにおすすめの小説
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない
ぜらちん黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。
ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。
ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。
ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。
女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる