駆け落ちの事実などありません。

しゃーりん

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36.

 
 
父と母が結婚したのが9月。

ジョエルが生まれたのは翌年8月。

その間の翌年1月に生まれたというラス。


「結婚した時、妻はもちろん妊娠していませんでした。
それに、ラス君が生まれてからジョエルが生まれるまで7か月しかありません。どう考えても、ラス君は妻が生んだ子ではないとおわかりいただけましたか?」 
 
「そんなはずは……あっ!ジョエルの誕生日をずらしたんじゃ?」


ロベルトは母だけでなく僕まで呼び捨てにした。 
父の機嫌がもっと悪くなりそうだ。


「妻の妊娠は多くの人の目に触れています。証人はいっぱいいますよ。そちらは?ラス君を妻が生んだという証人はいるのですか?」

 
いるはずがない。
母が僕を妊娠した頃なのだから。

そもそもラスが生まれたのは1月よりもっと前らしいが。 


「そもそも、妊娠したのは事実だったのですか?」

「妊娠したって手紙が……」

「それはまだ持っているのですか?」

「いや、そんな手紙だったと聞いただけで。」

「話になりませんね。」


実際は、妊娠したかもしれないって手紙らしいし。


「実はニック殿はあなたの思い込みを不思議に思い、近くに住んでいた者たちに話を聞いたそうです。
女性たちはあなたの妻が妊娠していたようには見えなかったし、連れ帰ったラスも生まれたてには見えなかったと言っていたそうです。そしてラス君は、ララさんという女性の子ではないか、と。」

「は……?ララ?……ラスを俺の子だと言った女?」


ロベルトは少し呆然としてから言った。


「あの女、エリーが死んだっていう嘘もついてた。……はあ?ラスは俺の子じゃない?」
 
「あるいは、あなたの妻のエリーさんが産んだ可能性もありますがね。」

「いや、でも、エリーはアリーシャで……」

「だから、それはあなたの妄想です。あなたの妻はエリー。」

「妄想じゃないって。駆け落ちしたんだよ!アリーシャと!!」

「頭が悪い人ですね。証拠はないんでしょう?」


ジョエルは、ロベルトが引き際をわかっていないと呆れていた。
妄想だったと認めれば、父はロベルトを少し脅してから解放するだろう。
だが、いつまでも母と駆け落ちしたと言い張れば、彼はもう普通の暮らしはできなくなる。


「もういい!アリーシャが駆け落ちしたことのある女だって言いふらされたくなければ金を渡せ!!」


あー……、馬鹿だな。
今、自分がどういう状況にあるのか、わかっていないのか?

縛られているんだぞ?


「ですから、駆け落ちの事実などありません。
あなたと別れた妻は卒業後、僕が何度も求婚して受け入れてくれた。これが事実です。このことは誰にも疑われたことはありません。あなたの言い分を信じてくれる人はいますか?」
 

ロベルトはようやく、父が駆け落ちの事実を知っていて、そう言っているのだとわかったらしい。
だがもう手遅れだ。
ロベルトは父を怒らせすぎたから。


 

 

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