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しおりを挟むその後、厳しく監視されるようになったビビアナは女の子を出産した。
正直、女の子でよかったと思った。嫁に出しても違和感を抱かれにくいからだ。
乳母はもう待機している。
ビビアナは子供に触れることなく、数日後に離婚して公爵家に引き渡された。
それと同時に別邸にいるマーガレットをアシュレイは呼び戻した。
「まあっ!可愛いわね。名前は決めたのかしら?」
「はい。デイジーです。」
「デイジーね。この子が跡継ぎになるのね。」
「そのことですが………」
アシュレイは別室で2人きりで話がしたいとマーガレットにお願いをした。
別室に移動したアシュレイはマーガレットに、ビビアナの不貞のことを話した。
「そんな……そんなことがあったなんて。アーロン様が守って下さった子供を跡継ぎにできないのね。
あぁ、アシュレイ。つらい決断をしたのではないの?」
「ええ。もちろん、隠し通すことも可能でしたが、何よりビビアナが知っています。
なので、デイジーは初めから跡継ぎではないと教育するべきなのです。
もちろん、冷遇するつもりはありません。我が子ですので。相応しい相手に嫁がせるつもりです。」
「そうなのね。では、アシュレイは再婚相手を探さないといけないわね。跡継ぎが必要だもの。」
再婚したらマーガレットは出て行ってしまうのだろう?
再婚はするがあなたが出て行けない方法は一つだけなんだ。
アシュレイはマーガレットの前に跪いて手を取り懇願した。
「僕は実母やビビアナ、公爵夫人のような女性を目の当たりにしてうんざりしています。
信じられるのはあなただけだ。そばにいてほしいと思えるのもあなただけ。僕が触れられるのもあなただけです。
マーガレット様、どうか僕と結婚してください。そして跡継ぎとなる子供を産んでほしい。」
「え……?私が?そんな。もうすぐ28歳になるのよ?産めるとは限らないわ。」
「わかっています。その時はデイジーが跡継ぎになる。」
「でも、それだとビビアナ様が……」
「ええ。処刑対象になります。それは仕方がない。あなたが僕を受け入れてくれなくてもそうなります。」
「そんな脅すようなことを言わないで……探せばあなたが触れられる女性が他にもいるわ。」
「もちろん、いるかもしれない。でも何年も見つからなければ?あなたの時間も進んでしまう。妊娠するためには一日も早くあなたと結婚することが望ましい。探している時間がもったいないのです。
誰でもいいわけではないのです。僕がソノ気になれなければ跡継ぎなどできません。わかりますか?」
僕はあなた相手にソノ気になるのだと言ってるのだ。性の対象に見ているのだ、と。
マーガレットは言葉の意味が理解して、想像したのか顔を真っ赤にした。いい傾向だった。
「こ、こんな年上に、そんな気持ちになれるものなの?」
「年齢なんて関係ありません。僕にとって魅力的なのは何年も前からあなただけです。
侯爵家の跡継ぎのために、僕と結婚してください。」
マーガレットには愛だの恋だの言うよりも、責任感や必要性を訴えた方がいいのだ。
今の状況では、アシュレイの子供を産めるのはマーガレットだけだということ、自分の決断でビビアナの処刑が回避されるかもしれないということが結婚を決断させることになる。
今、愛していると伝えれば逃げるだろう。
自分がいなくなれば、他に愛する人ができるはずだと思うだろう。
それではダメだ。
一日も早く結婚して子作りをする必要があると焦る気持ちに訴える方が有効的なのだ。
「じゃあ、4年でどうかしら。4年のうちに子供ができなければ違う人を探すべきだわ。」
……勝った。条件を付けられようが入籍してしまえば離れるつもりはない。
4年というのは初産での限界年齢が32歳だと一般的には言われているためだろう。
「僕との結婚を絶対に後悔させません。幸せにします。ありがとうございます。」
今更、撤回の言葉など言わせないという勢いで、何度も彼女の手に口づけた。
応援ありがとうございます!
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