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しおりを挟むアシュレイは楽観視していたことを悔いた。
若さ故にまだ未熟で、社交界の妬み嫉みの深さを甘く見ていたのだ。
マーガレットが父の妻であった時、穏やかなマーガレットの評判は悪くなかったし、爵位持ちの夫の妻としては他の夫人方よりも一回り以上若かったことから可愛がられていたのだ。
だがアシュレイの妻となったことで、アシュレイと5歳も離れていない娘を持つ親たちがマーガレットを蹴落とそうと考え始めた。
離婚したビビアナが産んだのは娘。
アシュレイが再婚して男の子が産まれれば、跡を継ぐのはその子供になる。
なので、我が娘を侯爵夫人にするためにマーガレットを非難するのだ。
しかもアシュレイはまだ20歳と若く、8歳も年上のマーガレットと再婚したのは、過ちを起こした責任だとか、未亡人の彼女を不憫に思ったからだとか、娘の母親代わりだとか、いろいろ言われている。
にこやかな表情の裏でマーガレットを傷つけようという醜さがあった。
男が若い妻を買った場合、女は同情されることが多いのに、男が女より若い場合、どうして女は非難されるのだろうか。
どちらの場合も男側の意向だと誰もがわかっているはずなのに。
いくら僕たちが仲睦まじくしている姿を見せても、少し離れた隙に若い令嬢がやってくる。
アシュレイには媚びを、マーガレットには若さを見せつけに。
マーガレットは、全然気にしていないと言っていたが、最近の笑顔の陰りはそのことしか考えられなかった。
どの令嬢が何を言ったのか………アシュレイは許す気はなかった。
「マーガレット、あなたから笑顔を奪うような発言をしたのはどこの誰だ?
先日の夜会で話かけられた伯爵令嬢か?それとも3人に囲まれていた時の令嬢たちか?侯爵夫人であるマーガレットを貶めることは僕が許さない。きっちり抗議をするので教えてくれないか。教えてくれないのであればあなたに接触した令嬢や夫人すべてに抗議しようと思うが。」
「……え?そんな、別に誰かに言われたことなんて気にしていないわ。私、昔から婚約者がいないことで何か欠点があると言われても、アーロン様と結婚したことで売られたと言われても、あなたとのことも、どんな噂を言われたり非難されても『勝手なこと言ってるわ』って思う程度だもの。抗議なんてする必要ないわ。」
マーガレットは何を言っているのだろう?と不思議そうな顔でアシュレイを見ていた。
本当に違うのか?
「じゃあ、何で笑顔が少なくなった?悩みがあるのは間違いないよね。」
マーガレットは引きつった顔をした。やはり、何かあることには違いない。
「僕はそんなに頼りないかな。年下だから僕に話しても解決にならないとか思ってる?」
「違うわ。そうじゃないの。私自身の心境の変化というか、今後のことについての悩みというか。」
「今後のことなら僕にも関係あるじゃないか。まさか僕と離婚したいとか言わないよね?」
僕のことが嫌になったのか?マーガレットが嫌がることなどした覚えがないが。
まさか、僕に抱かれたくないのか?満足してくれていると思っていたが。
父より下手なのだろうか。そこは経験の差で大目に見てほしい。
マーガレットが今まで以上に満足できるように努力するから。
「閨事に満足していないんだね?あなたを抱けることが幸せで気遣いが足りなかったようだ。
そう言えば、どう抱かれるのが好きか聞いたことがなかった。自己満足で申し訳なかった。」
もっと優しく、あるいは激しくしてほしいのであれば望み通りにしたい。
「ち、違うわ。閨事に関しては、その、満足しているわ。すごく。でも、悩み事は確かにそのことも関係しているわ。」
満足しているのに悩んでいるとはどういうことだ?
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