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しおりを挟む数か月後、アドリアナが王都から旅立ったという話を耳にした。
噂によると、王家も教会も、アドリアナが国を回ることに反対したらしいが、アドリアナは『自分の使命だから』と出発したらしい。
結局、旅を共にするための心の支えになるような男は見つからなかったのか、アドリアナは婚約も結婚もしないままだった。
同行は、アドリアナの侍女と8人の護衛の総勢10人+御者。
その人数が多いのか少ないのか、何とも言えない。
平和な世の中と言えども、盗賊はいる。街から離れれば、小さいが魔獣も出る。
そう思うと少ないだろう。
だがおそらく、8人の護衛のほとんどは中級魔法を使える者を揃えただろう。
中級魔法を見れば、大体の盗賊はひるんで逃げるはずだ。
盗賊に中級魔法を使える者などいやしないから。
魔獣も難なく倒せる。
グリーン伯爵は聖女である娘を守るために、そうしたはずだ。……そう信じたい。
一抹の不安を感じながらも、もう関係のないジークハルトにできることはなかった。
月日が経ち、ルーナが学園を卒業してからすぐ、ジークハルトは彼女と結婚した。
そしてその夜、もちろん初夜だ。
「ジークの花嫁になれて嬉しいわ!」
ルーナは本当に嬉しそうだ。
「僕も嬉しいよ。こんなに綺麗で可愛い女性が妻になってくれたなんて。僕は幸せ者だ。」
心からそう思う。
幼馴染だったルーナ。
初恋だったルーナ。
ジークハルトへの恋を諦めなかったルーナ。
アドリアナと婚約し、恋仲になった時も、ジークハルトはルーナを遠ざけることができなかった。
それほど彼女がそばにいることは自然だったのだ。
妹のように思ったことなどない。
友人という位置づけでもない。
傍から見れば、ジークハルトはズルい男だっただろう。
アドリアナがルーナをジークハルトの幼馴染で受け入れてくれたのをいいことに、ズルさに気づかないフリをした。
アドリアナに恋をしたことは事実だ。
彼女の優しい心は一緒にいて落ち着いた。
しかし、その優しさは聖女という形で万人にも施されるようになった。
ジークハルトはもっと具体的な優しさでいい。
ルーナのようにわかりやすく、身近な人を愛し守るのだという優しさで。
それに気づき、アドリアナへの思いは全てルーナへと塗り替えられた。
アドリアナに残っている気持ちと言えば、尊敬といったものだけだろう。
ルーナとの婚約期間で、ジークハルトはルーナを心から愛するようになっていた。
「ルーナ、愛してるよ。君のすべてが欲しい。この日をどんなに待ちわびたか。君と一つになって深く愛し合えるこの日を。」
「ジーク、私もよ。愛してるわ。諦めないでよかった。あなたが欲しいわ。」
ジークハルトはルーナを抱き上げてベッドに寝かせ、彼女に覆い被さった。
顔を近づけ、ゆっくりキスから始める。
気は焦るが、初めてのルーナを丁寧に抱きたかった。
夜は長い。
どの瞬間も、目に焼き付け、ただただ幸せな初夜を過ごした。
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