聖女の後悔

しゃーりん

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聖女が王都を離れている間に、王都で暮らす貴族や平民に少しずつ不満が溜まり始めていた。

『聖女がいたら』

『聖女がいなかったから』
 
その声があちらこちらから聞こえていた。 



ある高位貴族の令嬢が、大怪我を負った。怪我を負わせたのは下位貴族の令嬢。
すぐに治癒できていれば問題なかったのに、急変して亡くなった。
16歳の王子殿下の婚約者だった。

周りをよく見ていなかった下位貴族の令嬢が、高位貴族の令嬢にぶつかってしまい、高位貴族の令嬢だけ階段から転げ落ちるという事故だった。

この事故で、下位貴族令嬢は処刑、親兄弟も平民に落とされて処罰を受けた。 

『聖女がいたら、ここまで重い処分にはならなかっただろう』

『聖女がいなかったから、二人の令嬢が死に、家族まで罰せられた』

そう思った者は多い。

事故だというのに、確かに判決は厳しかった。
だが、聖女がいれば助かっただろう。この助かったかもしれないという考えが判決を重くした。
下位貴族令嬢も家族も、事故だったのにまるで殺してしまったという罪の意識を抱き、判決を受け入れたのだから。


だが、『聖女に王都に戻ってもらおうとしたが亡くなった』ことを耳にした聖女が発した言葉に、モヤモヤしたものを感じずにはいられなかった。

聖女は、

『聖女は私一人しかいないの。私が近くにいれば助けられる命はあるけれど、遠ければ残念だけど無理だわ。でも今ここにいる人たちを私は助けることはできるの。これはある意味、運の問題ね』

それから、

『聖女が存在するからといって、近くにいなかったことを不満に思うべきではないわ。少し前までは私も聖女ではなかったのだし、聖女が全ての命を助けられるわけではないのだから』 

それは、正論だった。

だが、期待させたのは聖女だろう?と責任転嫁してしまう者も多く、モヤモヤすることになるのだ。

特に王都で暮らす貴族は、数多いる平民よりも高貴な貴族の治癒が望ましい。
聖女は王都にいるべきだと声が上がり始めた。 
 
それにより、領地で聖女一行を歓待しなくなっていった。
 
 
「え!?金を払えって?」

「はい。領主様からは何も伺っておりません。聖女様の治癒の旅は自主的なもので、国の指示ではないとか。我々も商売ですので、タダで何日もお泊まりいただくより、金を払ってくださる客を泊まらせたいと思うのは当然ではないでしょうか。」

「そんなこと言うと、治癒してやらねえぞ?」

「構いませんが。我々の身内に聖女様の治癒を望む者はおりませんし。」

「チッ!」


どの宿でも似たようなことを言われ、聖女と侍女以外の者は雑魚寝するしかなくなった。


「私、馬車で眠ってもいいわよ?」


聖女はそう言うが、それだと寝ずの番の者が出るため、宿に泊まってくれた方がいいのだ。
 
比較的安全な旅をしてきた一行は、今更、野宿などしたくなかった。 
 
 
 
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