聖女の後悔

しゃーりん

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王都に帰ろうと侍女や護衛が言っても、聖女は『国を回るのが聖女の使命』だと言って先を進ませる。

しかしある時、馬車の車輪が壊れ、進めなくなってしまった。


「困ったな。……ん?」 
 

次の町はまだ先だと思っていたが、人の姿を見かけた。
よく見ると脇道があり、どうやらその先に村があるようだった。

御者は助かったと思ったが、護衛たちは嫌な予感しかしなかった。

というのも、これまでは大きな街、街より小さな規模の町ばかり寄っていて、村には行かなかったのだ。
村の規模にもよるが、村は大抵が貧しい者の集まりだから。

歓待も期待できないし、宿という施設があるわけもなく野宿に等しいだろう。
聖女をそんなところに案内したくないというより、自分たちが行きたくなかったのだ。
 
伯爵令嬢のアドリアナは村の存在を知らないだろうと思い、村は素通りしていた。


「馬車だけさっと直してきた方がいいんじゃないか?」

「だよな。聖女が知ったら、行くって言いだしそうだ。」


しかし、馬車から降りてきた聖女は他に人がいるのを見てしまった。


「あら。子供がいるわ。この近くにも住んでいる人がいるみたいね。行ってみましょう?」


護衛たちは歩みを進める聖女についていかないわけにはいかなかった。 


そして着いた村は、なんだか澱んでいる空気が見えそうな気がした。


「こんにちは。ここには怪我人や病人はいるかしら?」


声をかけられた子供たちは、思わず素直に答えてしまう。


「……あそこの家のおじちゃんは、昨日大怪我をしてたよ。」

「向こうの家のおばあちゃんは、寝たきりだよ。」

「あっちの家の赤ちゃんは、今にも死にそうだったよ。」


教えてくれた子供たちにお礼を言い、聖女はそれぞれの家を訪れた。


まず、大怪我をしていた男の傷を癒し、なんで治したんだと泣かれた。

次に、寝たきりのおばあさんの体を癒し、余計なことをするなと怒られた。
 
更に、死にそうな赤ちゃんの体を癒すと、その子はいらないと言われた。
 

聖女は困惑するしかなかった。


怪我をした男は、亡くなった妻の後を追いたかったから。

寝たきりのおばあさんは、食い扶持を減らすために餓死しようとしていたから。

死にそうな赤ちゃんは、父親が町で浮気をして帰って来なくなり育てられないから。 


それぞれ、そんな理由があったのだ。

しかし聖女は、『私が来て運がよかったですね』と言って、みんなを無言にさせていた。
その無言が逆に、怖かった。


御者と護衛たちは、一刻も早くこの村から出ねばならないと思い、必死で車輪の応急処置をして村から出発した。


「家だけで、お店も何もないところだったわね。ああいうところもたくさんあるの?」

「いえ、ほとんどありません!」
 

必死に否定するしかなかった。
聖女が恨みを買って襲われることなどあってはならない。

 
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