聖女の後悔

しゃーりん

文字の大きさ
19 / 28

19.

しおりを挟む
 
 
翌日、元婚約者であるジークハルトに会いたいと思ったアドリアナは、彼の屋敷に向かうことにした。 


「アドリアナ様、どちらに?」

「ジークハルト様のところに向かってほしいの。」

「え!?……はぁ、かしこまりました。」


両親にも言わず、侍女も伴わず、アドリアナはジークハルトのところに向かった。
 



「アドリアナ様がここに?」


御者が門番に伝えると、門番が驚いた声でそう言っているのが聞こえた。


「確認してまいりますので、お待ちいただけますか?」

「いらっしゃるのでしょう?だったら入れてほしいわ。」

「いえ、そういうわけには……お待ちください。」


以前は約束していない時でも入れてくれたのに変だな、とアドリアナは思った。

しばらく待たされて、中に入ることが許された。

案内されたのは、いつも会っていたテラス。
少し様変わりしていたが、懐かしかった。 
 
お茶を飲みながら少し待っていると、ジークハルトがやってきた。

 
「……久しぶり。ちょっと痩せたね。」

「ええ。自分ではあまり気にしていなかったんだけど、そうやって驚かれるわ。」

「髪も短いから印象が違って見えるしね。……今日はどうしたんだ?」


アドリアナはウィッグをつけてくるのを忘れていたため、短い髪にも驚かれたようだ。


「あなたに会いたくなって。あのね、私、これからは王都にいようと思うの。」

「……そうか。ご両親は安心しただろうね。」

「両親にはまだ話していないの。それでね、私たち……」


結婚しましょう、とアドリアナが言おうとしたら、声をかけられた。


「アドリアナ様、お久しぶりです。お元気でしたか?」


ルーナだった。


「ルーナ様、……ええ。元気でした。」

「あぁ、私ったら。聖女のアドリアナ様に元気かって聞くのも変な話ですよね。」


確かに、体調は自分で治せる。


「ルーナ様は今もジークハルト様のところによく来られているのですね。」


アドリアナがそう言うと、ルーナはジークハルトを見て首を傾げていた。


「アドリアナ様、私たち結婚しているんです。ご存知ありませんでした?」

「え!?結婚?」

「はい。アドリアナ様がまだ王都におられる時に婚約しましたよ?私が卒業してすぐ結婚したので、もう二年半と少し経ちます。」
 

二年半。
アドリアナが旅立って半年後に結婚していた。
 
昨日会ったマリーが結婚して子供を産んでいたと知ったのに、なぜジークハルトが別れた時のままでいると思っていたのか。
 

「子供も二人います。二人目は産まれたばかりで。一人目は男の子で、あ、あそこにいます。」
 

小さな男の子が庭園を歩いていた。

ジークハルトとルーナの子供。……どうして?

胸がモヤモヤとした。 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

しゃーりん
恋愛
アヴリルは2年前、王太子殿下から婚約破棄を命じられた。 そして今日、第一王子殿下から離婚を命じられた。 第一王子殿下は、2年前に婚約破棄を命じた男でもある。そしてアヴリルの夫ではない。 周りは呆れて失笑。理由を聞いて爆笑。巻き込まれたアヴリルはため息といったお話です。

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

これからもあなたが幸せでありますように。

石河 翠
恋愛
愛する男から、別の女と結婚することを告げられた主人公。彼の後ろには、黙って頭を下げる可憐な女性の姿があった。主人公は愛した男へひとつ口づけを落とし、彼の幸福を密やかに祈る。婚約破棄風の台詞から始まる、よくある悲しい恋の結末。 小説家になろうにも投稿しております。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。

記憶が戻ったのは婚約が解消された後でした。

しゃーりん
恋愛
王太子殿下と婚約している公爵令嬢ダイアナは目を覚ますと自分がどこにいるのかわからなかった。 眠る前と部屋の雰囲気が違ったからだ。 侍女とも話が噛み合わず、どうやら丸一年間の記憶がダイアナにはなかった。 ダイアナが記憶にないその一年の間に、王太子殿下との婚約は解消されており、別の男性と先日婚約したばかりだった。 彼が好きになったのは記憶のないダイアナであるため、ダイアナは婚約を解消しようとするお話です。

【完結】わたしの欲しい言葉

彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。 双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。 はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。 わたしは・・・。 数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。 *ドロッとしています。 念のためティッシュをご用意ください。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

処理中です...