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しおりを挟むアドリアナはジークハルトの屋敷からどうやって戻ってきたのか記憶になかった。
気づけば自分の部屋にいたのだ。
「ジークハルト様が結婚。……ルーナ様と。子供も二人。」
夢だったと思いたかったが、夢ではない。
三年前よりも落ち着いた大人になっていたジークハルトと、美しさが増したルーナ。
子供を見つめる二人の姿は、親の目だった。
そして、二人は自然と寄り添い、触れ合っていた。
アドリアナは思い出す度に、胸が痛くなった。
「待ってくれていなかったの?」
そもそも、待つ・待たないの話などなかった。
ジークハルトが一緒に行けないと言ったため、婚約は解消になったから。
「ひどいわ。」
誰がひどいのか。
昨日までジークハルトのことを思い出しもしなかったアドリアナか。
アドリアナを好きだと言ったくせにすぐに結婚したジークハルトか。
ジークハルトの妻になり彼の子供を二人も産んだルーナか。
アドリアナは今までに感じたことがないくらい胸が苦しかった。
「アドリアナが食事をしない?」
「どうしたのかしら。いつの間にか出かけたと思ったら呆然として帰って来たらしいの。」
アドリアナがどこに行ったのかを御者に聞くと、トワイニング侯爵家だったらしい。
「トワイニング侯爵家!?ジークハルト殿に会いに行ったのか?」
「どうして会いに行ったのかしら。懐かしく思って会いたくなったとか?」
「ジークハルト殿は結婚したのに、アドリアナが会いに行ったら驚いただろうな。」
「迷惑だって追い返されたのかしら。それがショックで?」
何があったのかわからず、想像するしかなかった。
アドリアナはそのまま眠ってしまったらしく、聞けたのは翌日だった。
「私、ジークハルト様が結婚したことを知らなかったの。待ってくれているかもしれないと思ったのに。」
「まさか、彼は待ってると言ってたのか?」
「……言ってないけど。」
グリーン伯爵は、一瞬、腹が立ち、すぐに萎んだ。
「ジークハルト殿が婚約した話をお前にしたはずだが。」
「多分、忙しくて聞いていなかったのね。」
婚約解消前後から、聖女の使命と旅の支度でアドリアナは忙しかった。
思い返せば、婚約解消の書類も自分で手渡しに行き、別れを告げていたのに。
「彼と結婚しようと思ったのか?」
「街でマリー様に会った時、彼女は夫と子供から離れたくないから聖女になれたとしても王都にいるって言っていたの。だったら、私もジークハルト様と結婚できるんじゃないかと思ってしまって。」
「ずっと王都にいてくれるのか!?」
アドリアナは父の剣幕に驚いた。
「ジークハルト殿は無理だが、別の男を探してやろう。嫁がなくていい。お前はここにいればいい。」
「ここに?」
「ああ。婿になってもらえばいい。聖女の婿なんだ。騎士なんかどうだ?聖女のお前の側にずっといてくれるような男がいいと思うが。」
ずっと側にいてくれるような。
アドリアナは、ジークハルトとルーナが寄り添う姿を思い出して涙を流した。
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