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しおりを挟むいきなり涙を流し始めたアドリアナに、両親は狼狽していた。
「ど、どうした?騎士は嫌なのか?」
アドリアナの婿に騎士はどうだ、と言った父は嫌がっていると思ったらしい。
「違うの。ジークハルト様の側にルーナ様が寄り添っていたことを思い出して、悲しくなったの。」
アドリアナは羨ましいと思ってしまった。
「ルーナ様はいつもジークハルト様の近くにいたわ。とても仲が良くて。」
「……お前と婚約している時もか?」
「ええ。よくお茶を一緒に飲んだの。幼馴染だそうよ。」
「まさか、お前と婚約していたのに浮気していたのか!?」
浮気?
それは違うわ。
「ジークハルト様は私を好きだと言ってくれたもの。ルーナ様は妹みたいな感じだったんじゃないかしら。
私と婚約解消することになったから、婚約者がいなかったルーナ様が選ばれたのね。」
「だったら、彼らは友情で結婚したようなものかもしれないな。お前が望めば離婚して、お前を選んでくれるかもしれないぞ?」
父の言葉に、アドリアナは希望を感じた。
「私、ジークハルト様と結婚したいわ。」
そう言った途端、アドリアナはふと、自分の魔力に違和感を感じた。
まるで、魔力を使いすぎた時みたいな……
それに気づき、アドリアナは真っ青になった。
「アドリアナ、どうした?」
「……魔力が、ほとんどなくなってしまったみたい。どうして!?」
アドリアナは聖女と呼ばれる上級魔法の魔力どころか、かつての中級の魔力すら体に感じなくなっていた。
この瞬間、アドリアナは聖女ではなくなったのだ。
「魔力が?どういうことだ?どうして急に……」
「わからないわ。旅の途中から、時々、不安定になっていたの。」
「聖女になれてもずっと聖女ではいられるわけではないということか?嘘だろう?」
父は頭を抱えていた。母は呆然としている。
アドリアナは恐れていた日が来たのだと思った。
辺境伯領から王都に戻る行程に口を挟まないと言ったのは、魔力の不安定さがあったから。
原因はわからなかったが、早く王都に戻った方がいい気がしたのだ。
教会で、過去の聖女の記録を読んだ時に、不思議に思ったことがあった。
みんな、途中から記録を残さなくなっていたのだ。
数日、数か月、一年、数年、……その時は気にしなかったが、今のアドリアナと同じように急に上級の治癒が使えなくなっていったのではないか。
聖女ではなくなり、教会を出ることになったため、記録は途絶えたのだろう。
アドリアナは久しぶりの聖女ということで教会に属することもなく旅に出て、碌に記録も取っていない。
父は、頭を上げて立ち上がって言った。
「ジークハルト殿が結婚していたことがショックで魔力値が下がったんだ。そうに違いない。お前が彼と結婚して幸せになれば、また魔力値は上がって聖女になれるはずだ!」
きっとそうだ、とアドリアナも思った。
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