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アドリアナはジークハルトの妻になっても聖女の力は戻らないと知り、呆然としているようだ。
彼女が抱いていた聖女としての使命感は素晴らしいとしか言いようがない。
貴族、平民を区別することなく治癒し、感謝されたことの方が多かっただろう。
聖女という上級の魔力値を失ってしまったとはいえ、以前の中級の治癒師として奉仕することになっても立派な行いであることに変わりはない。
ジークハルトがそう思っていると、大司教が言った。
「聖女の力を失った者は、中級どころかその下、下級になった例が多いようです。」
今までになかった感情を覚えたことで、貪欲になるからか?
アドリアナは大丈夫だろうか。
「アドリアナ、お前は、どっちだ?中級に戻っただけか?」
国王陛下の問いに、アドリアナはビクッとして答えた。
「わ、わかりません。」
その答えが、下級だと言っているようなものだった。
上級になる前は中級だった彼女は自分の魔力の流れがわかっていたはずだ。
以前と同じくらいなら中級と答えられたはずだが、わからないと答えた。
水晶に触れていないからまだわからないと言いたいのだろうが、答えは出たようなものだった。
「いずれにせよ、聖女はいなくなった。前に戻るだけだ。」
国王陛下は、自分に、ここにいる者たちに、そう言い聞かせるように言った。
だが、存在に期待していた分、落胆も大きい。
仕方のないことだとわかっていても。
そして当然のことながら、ジークハルトとアドリアナの再婚の通達は無効となった。
それはそうだ。
国王陛下が、アドリアナの聖女の力が戻ることを期待してのことだったから。
後は、トワイニング侯爵家とグリーン伯爵家で話し合えと国王陛下は退席した。
……話し合うも何も、ジークハルトは離婚する意思がないことは既に伝えているが?
「トワイニング侯爵様、ジークハルト様、この度はご迷惑をおかけいたしました。」
アドリアナは頭を下げて謝ってきた。
現実を受け止め始めたのだろう。
「アドリアナっ!お前は悪くないっ!!」
グリーン伯爵の方が現実を受け止めていないらしい。
というか、こうやって伯爵が庇うせいで、アドリアナは悪いことをしたという認識が薄れて育ったのだろう。
聖女に育てるということは、ある意味、非常識な子に育てるようなものかもしれない。
「いいえ、お父様。私は愛し合っている二人を引き裂き、更にルーナ様とお子様も引き裂こうとしていたのです。当然そうすべきだと思っていた自分が恥ずかしく、情けない。嫉妬の感情とはこんなにも恐ろしいものなのですね。聖女でなくなったことも当然だと思います。」
アドリアナは嫉妬に囚われていた自分から目を覚ますことができたようだ。
「ルーナ様にもどうか謝罪を。もう二度とご迷惑はおかけしないと約束いたします。」
「わかった。アドリアナ嬢、君が聖女であったことは誇りに思っていいと思う。誰もが持っている感情を覚えたことは批判されることでもない。これからも君らしくあれるよう、陰ながら応援しているよ。」
ジークハルトはアドリアナと笑顔で別れた。
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