24 / 42
24.
しおりを挟むウォルターは執務室に入り、ダッチス様とレベッカが一緒にいる姿を見て悪態をつきたくなった。
ここは執務室であって逢引きする場所ではないし、そもそも仕事中なのだ。
レベッカは奥様の側にいないで毎日どこでサボってるんだか。
「ダッチス様、資料を取ってきました。」
「あ、ああ。レベッカ、仕事に戻れ。」
「はい。奥様を探すのって大変ですからね。」
そう言って、レベッカは執務室を出て行った。
「ダッチス様、レベッカは何をしにここへ?」
「はぁー……アリーズには困ったものだ。男爵夫人としての予算が少ないと怒っていたらしい。」
「レベッカは奥様がそう言ったとダッチス様に告げ口を?」
「ああ。妻の本性は結局、性悪なのかもしれないな。俺に負い目を感じさせたいのだろう。」
「嘘ですよ。」
「ん?」
「嘘。レベッカの嘘です。」
「嘘って……何がだ?」
「今までレベッカが言ったこと、ほとんど全部が嘘。じゃないですかね?」
「…………は?どういうことだ?」
「先ほど、奥様にお会いしました。レベッカから伝言、何一つ受け取っていないそうです。
それに、レベッカは奥様の専属侍女としての仕事もほとんどしていません。今も、奥様を探している様子でしたが、探してもいないでしょう。どこかでサボってると思いますよ。」
「俺の伝言をレベッカが伝えていない、と?」
「ええ。朝しかレベッカとは会わないと言っていました。奥様は昼食から夕食まで、リズベスお嬢様の部屋でご一緒にお過ごしになられているそうです。」
「え……?毎日、か?一度食事を一緒にしたとロミーナから聞いたが。」
「毎日みたいですよ。そのことをレベッカは知ってるのかどうかも疑問です。
それなのに、まるで奥様がダッチス様を拒絶したかのような伝言を毎回してくれましたね。」
「嘘だろう……?」
「本当ですよ。ちなみに、専属侍女を外れてくれと奥様が言っても、ダッチス様の指示だと嘘をついて奥様の侍女を続けているそうです。」
「俺の指示?そんなバカな。」
「それから、レベッカと夫婦の寝室を使用する件も、ダッチス様がレベッカを連れ込んだと思っていました。愛人との交わりを妻に聴かせたい性癖でもあるのかと、怖くて部屋を移ったと言っていましたよ。」
「アリーズが喜んで部屋を移り、寝室も使ったらいいと言ったとレベッカが……」
「どう考えても非常識でしょう。仮に、本当にそう言ったのだとしても夫婦の寝室を愛人と使うという行為は間違っています。許せても、ダッチス様のベッドですね。それでも妻を気遣えば私室ではしません。」
「……避妊薬が、夫婦の寝室にあったから、別にいいかと。レベッカを寝室に置いて行ったアリーズに腹が立ったという気持ちもあったが。」
「あぁ、寝室にレベッカがいたのは奥様の指示だと思われていたのですか。ダッチス様がレベッカを愛人に選ぶかどうかもわからないのに、自分の侍女を寝室に置いておくわけがないじゃないですか。」
「……そうだな。つまり、全てレベッカが仕組んだってことなんだな。目的は愛人か?金か?」
「それはわかりません。先ほど奥様の予算について口にしたのなら、金もあり得るでしょう。」
ダッチス様はため息をついた。
「つまり、侍女を辞めさせて愛人手当でも渡せばレベッカは満足するのか?」
ダッチス様がここまで愚かだとは。気づかなかった自分も愚かだが、レベッカを切り捨てようと思わないダッチス様はどうしようもないとウォルターは悲しくなった。
1,716
あなたにおすすめの小説
【完結】不倫をしていると勘違いして離婚を要求されたので従いました〜慰謝料をアテにして生活しようとしているようですが、慰謝料請求しますよ〜
よどら文鳥
恋愛
※当作品は全話執筆済み&予約投稿完了しています。
夫婦円満でもない生活が続いていた中、旦那のレントがいきなり離婚しろと告げてきた。
不倫行為が原因だと言ってくるが、私(シャーリー)には覚えもない。
どうやら騎士団長との会話で勘違いをしているようだ。
だが、不倫を理由に多額の金が目当てなようだし、私のことは全く愛してくれていないようなので、離婚はしてもいいと思っていた。
離婚だけして慰謝料はなしという方向に持って行こうかと思ったが、レントは金にうるさく慰謝料を請求しようとしてきている。
当然、慰謝料を払うつもりはない。
あまりにもうるさいので、むしろ、今までの暴言に関して慰謝料請求してしまいますよ?
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?
よどら文鳥
恋愛
デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。
予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。
「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」
「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」
シェリルは何も事情を聞かされていなかった。
「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」
どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。
「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」
「はーい」
同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。
シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。
だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。
【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。
112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。
エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。
庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる