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しおりを挟む気がつけば、ラヴェンナはジュリエッタ様と共にいつもの東屋に座っていた。
目の前には聖女様。まだ正式にイボンヌ様が聖女になったわけではないため、クレシア様である。
「ふふ。どうしてここにいるのかって思っているわよね?早く家に帰りたいのにって?いいじゃない。ちょっとだけ私の話に付き合って、ね?」
聞きたいような、聞きたくないような聖女様のお話。
でもイボンヌ様が選ばれた後なのだから、ラヴェンナはもう問題ないような気もした。
それに、自分の考えが間違っていないのかも知りたい。
「ええ。ラヴェンナが思っている通りで間違いないわ。聖女と呼ばれる私は『聖力を持った精神体』よ。」
やっぱり。
「つまり、聖女様はその、聖女になる女性の体を乗っ取っているということでしょうか?」
「そうね。でも本人の意識もあるわよ。このクレシアも私が体から出て行けば彼女本人のものだもの。
それに、私が聖女として活動している間の記憶も彼女には全部あるし、時々は彼女の意識を表に出してあげたりしていたし。」
「そうなのですね。クレシア様は今後、ご実家に?」
「まさか。彼女は実家と縁を切っているの。というか、私が切らせたわね。
クレシアは聖女の役割を終えた慰労金を孤児院の子供たちや教育に使いたいそうよ。心の綺麗な子だわ。」
聖女様はクレシア様の選択を嬉しそうな笑顔で話していた。
「聖女様は、私たちの考えを読める、のですよね?」
聖女候補十人の心を読むために、私たちはここに通わされていたように思う。
「ええ、そうよ。この聖堂内、敷地も含めて、ここにいる人たちの声を聴くことができるわ。
ラヴェンナが『聖女にはなりたくありません』と願う声や婚約者への思いもね。それにあなたは婚約者からもとても愛されているわ。そんな二人を引き離すような野暮なこと、私はしないわ。」
サラッと婚約者ラウルード様の気持ちまで教えられたラヴェンナは、恥ずかしいけれど嬉しかった。
「それに比べて、ジュリエッタの婚約者、アレクサンドルは最低よ。野心まみれの男。ジュリエッタが聖女になれなかったら婚約解消するって言っていたけれど、本気で言っていたわ。」
「……そうですか。でも解消してもらえるかどうか、両親よりも陛下方が許可されるとは思えません。」
そうかしら?アレクサンドル殿下が聖女になるイボンヌ様を選ぶと言えば許してもらえそうだけど。
「大丈夫よ、ジュリエッタ。イボンヌがアレクサンドルとの結婚を願ったから。
聖女になる時に、実現可能な願いを叶えてあげることにしているの。イボンヌの願いは少し前まで元婚約者の不幸を願うものだったけれど、彼女はアレクサンドルとの結婚を望んだから。」
イボンヌ様とアレクサンドル殿下の結婚は認められることは決定らしい。
ということは、ジュリエッタ様との婚約は解消。
ラヴェンナがジュリエッタ様を見ると、嬉しそうに笑っていた。
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