聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ

しゃーりん

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国王陛下はやはり王族に聖力を持つ者と縁を結びたいと考えたのか、孫の第一王子が婚約したばかりなのを悔やみ、婚約解消させるか、と呟いていた。


「陛下、第一王子殿下が選ばれた婚約者を無下にしてはなりません。長女のアリアローズは殿下に選ばれなかったのですし、選ばれた婚約者はセレンティナの姪でもあるのです。」

「だが……わざとか?婚約者が決まってから報告に来たのは。」


さすがに国王陛下も気づいたらしい。
婚約者が決まる前に知っていたら、そもそも数人の令嬢と交流などせずにアリアローズに決まっただろう。


「陛下、聖力を持つ者を増やすには、子を多く産む機会が必要になりましょう。
王太子妃や王妃になっていては、公務などで忙しく、精々二人。まして、望まれてもいないのに妻になったとなれば子供を授かれるかどうかも怪しくなるやもしれません。それは不本意ですよね?」

 
可愛い孫が気に入り、婚約者に選んだのはアリアローズではないのだ。

決定した婚約を覆すには理由が必要になる。
ボッティ公爵家は聖力のことを公表したくないし、クレベール公爵家に非があるわけでもない。

今更、婚約者の変更などできやしない。 


「では下の王子、フェリクスではどうだ?10歳だ。相手は長女でも、次女でも構わない。」 


長女アリアローズは12歳、次女リリーベルは8歳なので、リリーベルの方が合うだろう。


「次女の方がいいかと思いますが、フェリクス殿下とお会いして決めてはどうでしょうか。」
 
「そうだな。そうしよう。……で、夫人は治癒を使えるということだが試してみてくれないか?」


国王陛下はそう言って、自分の腰を指さした。
どうやら腰痛に悩まされているらしい。
前国王陛下もそうだった。

彼らは椅子に座る時間が長く、運動不足なのだと思う。
そのうち、膝も痛いと言い出すに違いない。

クローヴィスを見ると頷いたので治癒して見せろということらしい。
セレンティナは国王陛下の腰に手を当てて治癒をした。

別に患部に手を当てる必要はないが、なんとなくわかりやすいかと思ってそうした。


「おおっ!治ったっ!!薬草の湿布では大した効果がなくてな。また痛めば頼めるか?」


そう言われるのはわかっていた。


「他言無用でお願いいたします。聖女でも医師でもありませんし、不特定多数の方を治せるほどの聖力はございませんので。」

「わかっておる。いや、だが便利なものだな。治癒ができる者が増えるのはいいことだ。」

「失礼を承知で申し上げますが、庭園を歩かれるなど毎日なにか体を動かす運動をされた方がよろしいかと思います。陛下のお歳ですと、膝にも痛みがくるのは時間の問題かと。
治癒で治せばいいというお考えではなく、体を動かすことで予防されることをお勧めいたします。」

「予防、か。庭園を散策するなど長らくしていないな。王妃や孫を誘って歩くのもいいかもしれないな。」
 

そうして下さい。毎週のように治癒に呼ばれては困るので。
 



 
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