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しおりを挟む国に聖力を持っている者が200人ほどいることを知らないシェイミと男爵夫妻は、シェイミが平民を治癒することを望まれていることを知り、図に乗った。
治癒の力を平民に使っていては、高位貴族から頼まれた時に使えなくなるため、一日二人しか治癒しなくなったのだ。
しかも、『リリスティーナ聖堂』の聖人に、王族や高位貴族から治癒の依頼があれば、真っ先に伺うと公表してほしいと頼んだ。
シェイミが治癒できることを広く伝えなければならないと思ったから。
しかし、聖人は首を傾げて言った。
「国がシェイミ様に望まれていることは、平民の治癒でございます。治癒なされないのであれば、聖堂から退出いただきますが?」
「追い出すっていうの?私は貴族を治癒したいって言ってるのっ!」
シェイミが聖堂で過ごすようになって半月。
彼女は周りの状況を何も知らなかった。
「実はですね、シェイミ様が治癒を使えることが知られるようになってから、他にも二人の貴族が名乗り出てきました。伯爵令嬢と子爵令嬢の方で、シェイミ様よりも多くの人を治癒できますし、深い傷も治せます。病気も重症者を治せるとのことで、貴族の傷病者はそのお二方が治癒することになりました。」
シェイミと男爵夫妻は唖然とした顔になった。
実は、聖力を使えることを隠していることに納得できない令嬢たちが『実は私も使えるの』と学園で口にしてしまったのだ。
それですごいすごいと囃し立てられ、調子に乗って傷のある令息の治癒をして見せたりした。
高位貴族では自分もそうだったり、身内にいたり、親戚にはもう既にいるため興味はない。
なので、騒いでいるのは子爵家・男爵家の者がほとんどだった。
それからは治癒を望む者がその令嬢たちに声をかけているらしく、シェイミの出番はない。
「そ、そんな……私がしたかったのに。」
「シェイミ様の治癒力ですと、騎士の傷を治すのも大変かと思いますので、平民の方の病状が悪化する前に治癒してくださると有難いのですが。」
シェイミが二人しか治癒しないため、日に日に病状が悪化する平民もいるのだ。
しかし、善意の治癒であるため、聖人も無理強いはできなかった。
だが、平民に希望を持たせたのはシェイミ自身であり、ここにいるのであれば治癒する義務があるのではないかと言う。
男爵家は王都に家を持っておらず、学園に入学するとしても来年であるシェイミは、聖堂を追い出されれば男爵領に戻るしかない。
このままスゴスゴと引き下がりたくなかったシェイミは、平民の治癒をすることに決めた。
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