聖女になりたいのでしたら、どうぞどうぞ

しゃーりん

文字の大きさ
91 / 100

91.

しおりを挟む
 
 
シェイミが王都に一人残り、平民相手に病気や怪我の治癒をし始めて少し経った頃だった。

流行り病に罹る者が現れたのだ。

幸い、以前にも流行った病で薬もあるし、安静にしていればほとんどの者は治る。
100人に5人ほどが命の危険に陥るが、それはほぼ栄養不足の平民だった。
 
問題なのは、その栄養不足の平民を治癒しているのがシェイミということだ。

病に罹った者が毎日押しかけてきて、数人しか治せないのに次の日には増えている。
『早く治せ』と罵倒されることもあり、シェイミは逃げ出したくてたまらないが、聖堂の前には人が溢れていて逃げ出すこともできないのだ。

しまいには自分も病に罹ったが、聖力が尽きて治せなくて倒れた。
 

(仕方のない子ねぇ。)


リリスティーナは聖人の体を借り、シェイミを治癒した。

ひと月ほど前、リリスティーナは聖堂に戻ってきていたのだ。
そして、シェイミのことを知った。


(このままでは平民たちのおさまりがつかないわ。名乗り出た二人の貴族令嬢。彼女たちにも治癒をお願いするしかないでしょう。)

(わかりました。国から指示をしていただきます。)


リリスティーナの言葉に乗っ取られている聖人が答えた。


病気も治癒できると名乗り出たのは彼女たちなのだ。
役目を果たしてもらわなければ、居場所を失うことになるかもしれない。

名乗り出て何もしなければ、非難は免れないだろう。

昔の聖女様は、貴族・平民関係なく、治癒して周ったのだから。 



貴族社会に聖力を持つ者は次の時代で下位貴族にも増えるに違いない。

貴族よりも平民の方が圧倒的に多いため、今回聖堂に戻る前のリリスティーナは子供を平民と結婚させた。
医師と結婚した娘の子供たちも聖力を持っている。

医師の子供は医師を継ぐことが多い。
なので、医師に聖力を持つ者が増えればいいと考えたのだ。

医師の子供同士が結婚していけば、領地から領地へと平民でも治癒が使える医師が増えるだろう。
 
まだまだ先は長い。
 


治癒できる令嬢二人が加わり、王都の流行り病が落ち着くと、令嬢二人は領地を周って治癒することになった。
聖力の弱いシェイミは聖堂にお留守番である。 

シェイミはお留守番でよかったと思ってしまった。

治せ治せと迫ってくる人の怖ろしさを身に染みて感じた。

大した治癒力もないのに、自惚れていたのだと自覚した。



シェイミよりも令嬢二人の方がもっと辛い目に合っていた。

『もっと早く来い』

『昨日来てくれていたら……』

そんな声を浴びせられ続けたのだ。

貴族だろうが、平民だろうが、関係ない。
 
たった二人に何千何万という平民が治せ治せと毎日やって来るのだから。

しかし、それも動ける者だけで、重病者はベッドの上で亡くなり続けているのだ。


 
浅はかな考えで名乗り出てしまったことを後悔せずにはいられなかった。

親から言われた言葉を思い出していた。

『病を治癒ができると名乗り出るのなら一生治癒をして生きる覚悟を持っていなければならない。』 

その通りだと思った。


一度名乗り出たら、今更、逃げられないのだと。 
 


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。 --注意-- こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。 一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。 二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪ ※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

ポンコツ娘は初恋を諦める代わりに彼の子どもを所望する

キムラましゅろう
恋愛
辺境の田舎から聖騎士となった大好きな幼馴染フェイト(20)を追って聖女教会のメイドとして働くルゥカ(20)。 叱られながらもフェイトの側にいられるならとポンコツなりに頑張ってきた。 だけど王都で暮らして四年。そろそろこの先のない初恋にルゥカはケリをつける事にした。 初恋を諦める。諦めるけど彼の子供が欲しい。 そうしたらきっと一生ハッピーに生きてゆけるから。 そう決心したその日から、フェイトの“コダネ”を狙うルゥカだが……。 「でも子供ってどうやって作るのかしら?」 ……果たしてルゥカの願いは叶うのか。 表紙は読者様CさんがAIにて作成してくださいました。 完全ご都合主義、作者独自の世界観、ノーリアリティノークオリティのお話です。 そして作者は元サヤハピエン至上主義者でございます。 ハピエンはともかく元サヤはなぁ…という方は見なかった事にしていただけますと助かります。 不治の誤字脱字病患者が書くお話です。ところどころこうかな?とご自分で脳内変換しながら読むというスキルを必要とします。 そこのところをご了承くださいませ。 性描写はありませんが、それを連想させるワードがいくつか出てまいります。 地雷の方は自衛をお願いいたします。 小説家になろうさんにも時差投稿します。

婚約者から悪役令嬢と呼ばれた公爵令嬢は、初恋相手を手に入れるために完璧な淑女を目指した。

石河 翠
恋愛
アンジェラは、公爵家のご令嬢であり、王太子の婚約者だ。ところがアンジェラと王太子の仲は非常に悪い。王太子には、運命の相手であるという聖女が隣にいるからだ。 その上、自分を敬うことができないのなら婚約破棄をすると言ってきた。ところがアンジェラは王太子の態度を気にした様子がない。むしろ王太子の言葉を喜んで受け入れた。なぜならアンジェラには心に秘めた初恋の相手がいるからだ。 実はアンジェラには未来に行った記憶があって……。 初恋の相手を射止めるために淑女もとい悪役令嬢として奮闘するヒロインと、いつの間にかヒロインの心を射止めてしまっていた巻き込まれヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:22451675)をお借りしています。 こちらは、『婚約者から悪役令嬢と呼ばれた自称天使に、いつの間にか外堀を埋められた。』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/572212123/891918330)のヒロイン視点の物語です。

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。

藍生蕗
恋愛
 かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。  そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……  偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。 ※ 設定は甘めです ※ 他のサイトにも投稿しています

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

私の願いは貴方の幸せです

mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」 滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。 私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...