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しおりを挟むその後も、シェイミは王都で、二人の令嬢は月の半分は領地を周って治癒を施すことになった。
聖女一人がやっていたことを、三人でやることになる。
治癒を使える者がいると知って、病でも傷でも治癒を望む依頼が殺到したのだ。
彼女たちは逃げられなくなった。
シェイミは知らないが、二人の令嬢の家族の中にも治癒が使える者がいた。
そのため、協力を仰いだが、自分が治癒が使えることを知られては困ると断った。
しかも、口外した際は縁を切るとまで言われて。
男爵令嬢が平民から聖女だと言われたことに対抗して自分も治癒できると名乗り出たことを後悔したが、もうどうしようもない状況だった。
治癒に明け暮れる暮らしになった三人は、せめて聖女がいた時のように尊い存在と思われたくなった。
治癒力を持っているけれど、隠している。
そんな存在は意外と多くいるかもしれないと知ったから。
自分たちが尊敬され憧れられるようになれば、他にも名乗り出てくれる者もいるかもしれない。
そうなれば、自分たちの負担も軽くなるはずだ、と。
そして年月が過ぎると意外にも、数人が名乗り出てくるようになった。
家での扱いに我慢できず、それならば治癒師として住み込みで働きたいということだった。
人数が増えたことで、流行り病の時は死者が減ったことは間違いないが、まだまだ人数は足りておらず、彼女たちはせっかくの聖力を子供を産んで次代に繋げる役目を果たせなかった。
そうなることはわかっていた。
なので、リリスティーナは先に人数を増やしたかったのだ。
貴族から聖力を繋げていったのも、治癒が使える平民が現れれば、国や貴族に取り込まれて酷使されることになり、結婚して子供を産むことなどできないだろうと思ったからだった。
高位貴族で聖力を持つ者が増えれば、下位貴族や平民に治癒を使える者が現れても取り込もうとはしない。
平民は平民を治せばいいと思うだけだろう。
リリスティーナが節操なく、乗っ取った体で妊娠して子供を産んでは別の女性を乗っ取ることを繰り返していれば、もっと早くに聖力を持つ者は増えていた。
しかし、そこまでしたいとは思えず、訳あり女性を乗っ取ってはその女性の人生を終えるまで過ごしていた。
更に何十年かが過ぎ、平民にもポツポツと治癒師が現れるようになっていた。
領主が取り纏めて治癒師を配置し、医師が治癒師になっていた。
そうなると無料での治癒ではなく有料となったが、貧しい者は申請して無料となった。
治癒師が街だけでなく、村に一人はいるようになるまで、もう少しだろう。
その頃には、500年が過ぎ、リリスティーナの精神も浄化しているのではないかと思った。
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