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しおりを挟む王太子が目を見開いてマーリアを凝視している。
「側妃って言ったか?」
「ええ。言いました。あなたの正妃は婚約者のメリーザ様のままです。」
「なんで側妃に……」
「わかりませんか?ミカルディス様はネリリ様と結婚します。
このままでは、私は婚約者を奪われた形になるのです。
今更、侯爵位以上で誰が結婚してくれますか?
王太子のハトコである私に修道院に行けと?
見方によると私が婚約者を裏切ったと思われるかもしれない。
父が出した選択肢は二つです。
一つはあなたに請われて側妃になる。もう一つは自死です。」
「そんな……」
「部屋を使わせたあなたは、私の婚約者であったミカルディス様を裏切らせたのです。
なので、あなたにも責任を取ってもらいます。
ミカルディス様との婚約は円満に解消後、私はあなたに側妃にと望まれる。
ミカルディス様はその後にネリリ様と恋をした。
そういう筋書きです。
ミカルディス様よりも高位の者でないと婚約解消の経緯を怪しまれます。
ネリリ様が私を見下せない地位にいなければなりません。
ミカルディス様の不貞は、婚約解消後のため不貞ではないとするのです。」
「お父上の侯爵がそう望まれたということか。」
「ええ。ですので……」
マーリアは持っていた小瓶を飲んだ。
「っちょっと、何を飲んだ?」
「媚薬ですわ。少し強力な、ね。クロノス様、責任取ってくださるでしょう?
それとも婚約者に裏切られた私を犠牲にする?」
「……私が純潔を奪い今日から側妃になる。そういうことか。」
「ええ。あなたが抱けば私は死なない。抱かなければ恐らく狂い死にかしらね?
私は自分を犠牲にしないためには悪女にでもなるわ。」
「なら、悩むまでもない。私の部屋に行こう。今日の執務は終わりだ。みんな帰れ。」
王太子は潔く決断してマーリアと共に部屋を出た。
2人共、ミカルディスの方は見なかった。
王太子は侍従に、しばらく取り次がないように伝えてマーリアと部屋に入った。
ベッドの前で、体が熱くなってきたマーリアを抱きしめて詫びた。
「ごめん。なんて浅はかなことをしてしまったんだろう。
ミカルディスを残して夜会に戻った時に、マズいことをしたと思った。
あの時に部屋に戻るべきだった。まさか、最後までしていただなんて……
それに、誰に媚薬を飲まされたか調査すら指示しなかった。
王太子失格だな。
今回は自作自演だったけど、本当だったら他に被害者がいたかもしれないのに。」
「ええ。父はそのことについても怒っていました。
最近は誰も彼もが平和ボケしているようだって。
そんな時にネリリ様のような問題を起こす令嬢や令息が出てくるそうです。」
「ごめんな。酒に飲まれないように気をつける。
王太子として、次期国王として、今後は気を引き締めるよ。」
マーリアは王太子の腕の中で顔をあげて微笑んだ。
少し上気した顔のマーリアを見た王太子は、マーリアに聞いた。
「口づけてもいいか?」
「ええ。」
もう覚悟はとっくにできている。
ゆっくりと唇を重ねた2人は、ここから情事が始まった。
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