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しおりを挟むマーリアと共に王城に来た父の侯爵は、国王陛下に急遽取次を願った。
王太子及び側近たちの失態を報告し、マーリアの嫁ぎ先は王太子しかないことに国王陛下は同意した。
あのネリリが妊娠しているかはわからないが、ミカルディスが純潔を奪った以上は責任がある。
たとえ、仕組まれたことであっても、ネリリが強要したわけではないから。
ネリリがミカルディスとの関係を声高に触れ回るまでに嫁げるのは側妃しかなかった。
クロノスとマーリアが部屋に入った報告を聞き、大至急マーリアが側妃になることと部屋を用意するように指示を出した。
その間にミカルディスの両親も呼び出し、経緯を報告して婚約解消の日付を5日前にして処理した。
5日前の夜会でのダンスは婚約を解消した2人の最後のダンスだったと思わせるために。
あの時、ネリリと肉体関係を持った時は既に婚約者がいなかった。婚約解消済だった。
だからミカルディスが誰と恋をしようがマーリアには関係ない。
ミカルディスはクロノスのマーリアへの秘めた思いに気づいて身を引いた。
そして、クロノスに望まれて今日側妃となった。
………ということになった。
クロノスとマーリアが出て行った部屋の中に残された4人。
ミカルディスは呆然として真っ青な顔色のままだった。
デニーはミカルディスにかける言葉がなかった。
ランサムは髪をグシャグシャと掻き回していた。
アルバーノはため息をついていた。
その4人が国王陛下に呼ばれ、マーリアの父とミカルディスの両親もいる場を訪れた。
ミカルディスがクロノスの思いを汲んで婚約解消したのが5日前の夜会直前。
ダンスは最後の挨拶。
ミカルディスがネリリと関係を持った時は婚約者はいなかった。
クロノスの思いを受け止めたマーリアは今日から側妃になった。
このことを4人にも伝え、これが正しい経緯だと理解させた。
その上で、思考力を低下させるほどの酒量を禁止した。
今回の失態には目を瞑るが、次はない。そう告げられた。
文句を言ってくるかもしれないのは、クロノスの婚約者メリーザの公爵家だろう。
しかし、婚約を結ぶ時に伝えておいた。
『5歳も年下なのだから、結婚するまでに側妃や愛妾がいても受け入れるように。』
通常であれば、正妃との結婚が先であるが、5歳差は大きい。
しかも、すぐに妊娠するとも限らないのだ。
ただでさえ、王太子には兄弟がいない。
王族を増やす意味でも、側妃は前から検討されていた。
公爵家は、側妃に男の子が産まれた場合でも正妃の男の子を跡継ぎにすることを条件にのんでいる。
つまり、文句を言われても、マーリアが側妃になることは問題にはならないのだ。
今日から正式に側妃となったマーリアは、王宮で暮らすことになる。
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