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しおりを挟むクロノスの破婚パーティーから2か月後、国王陛下在位20年式典でマーリアが王太子の正妃となることが正式に発表された。
式典に正妃として出席した王太子妃マーリアと王太子クロノスの仲睦まじい雰囲気がしっかりと伝わり、誰からも反対されることはなかった。
クロノスは、マーリアを唯一の妃とすることを宣言した。
つまり、側妃も愛妾も不要だと公に言ったも同然で、話が上がることさえ抑えた。
こうして溺愛説が王宮に留まらず、国中に知れ渡ることになった。
国王陛下は、前国王が病により早く退位して、まだ42歳なのに在位20年。
早くのんびりしたいとクロノスに譲位を持ち掛けるが、クロノスはもちろん却下。
まだ幼い子供2人とマーリアのお腹の中にもう一人。
マーリアと子供たちとの時間を優先したいので、あと10年くらい頑張ってくれと言われた。
息子たちの幸せそうな姿を見ると、仕方がないのでもう少し頑張ろうと思うのだった。
ミカルディスは、浮気で婚約が解消になり跡継ぎからも外された転落の見本のようにしばらくは噂になったが、変わらずに王太子の側近であったことから、仕事は真面目な男なのだと評価が上向きになった。
そのうち、令嬢からの誘いを徹底的に断るミカルディスを見て、元々遊んでいるような男ではなかったことを周りも思い出す。
つまり、女遊びが激しいわけではなく、つい魔が差した浮気が発覚したのだと思われるようになる。
そうすると、再び過ちを起こすことはないだろうと縁談が持ち込まれるようになった。
伯爵家への婿入り。これは実家との繋がりが欲しいのだろう。いい話ではある。
しかし、王城勤務をやめるつもりはなかったので、断った。
適齢期を過ぎた令嬢からの申し込み。これが一番多かった。
ミカルディス自身よりも年上。
何人か会ってみたが、侯爵家からの支援がないことで令嬢のように過ごせないと気付いたようだ。
不満が顔に出ていたので、断った。
もう独身でいいんじゃないか?だけど、縁談攻撃が鬱陶しかった。
そんな時に出会ったのが、王城で働く伯爵家次女のカーラ。
親に、仕事をやめて結婚するように言われていて、後妻にでも嫁がされそうだと言う。
仕事を続けたい女と結婚する気はないか?そう持ち掛けられた。
良いと思った。
お互い、実家に頼らずに2人の給料だけで生活する。
体の関係はあり。ただし、浮気は許さない。
子供はなし。仕事をしたいから。
お互いの両親にも説明し、家に迷惑をかけないのならこんな夫婦もありだろうと認められた。
ミカルディスとカーラは意外と気が合った。
休みを合わせて出かける、どこにでもいる仲の良い夫婦になった。
幸せを掴んだミカルディスを見て、王太子も他の側近たちも安堵した。もちろんマーリアも。
クロノスがミカルディスを裏切らせたというのは暴論だったけど、クロノスに責任を取らせて側妃になった。
なのに、正妃になれることになって、そしてもうすぐ王妃になる。
王女だった祖母は、まさか孫が王妃になるだなんて思ってもいなかったでしょうね。
常々、『王族は面倒なの。私には合わなかったわ』なんて言ってたから。
「ねえ、クロノス。」
「ん?」
「私ね、悪女になるつもりだったんだけど、あなたの側妃になったこと以外にどうすればよかったのか思いつかなかったわ。」
「ふっ。悪女か…君は側妃になるまえからずっと悪女だよ。」
「ええ?」
「出会った時からずっと私の心に住み着いて離れない悪女だ。」
「まあ!なら、この先もずっとあなただけの悪女でいなきゃね。」
そう言った私にクロノスは甘い口づけをした。
<終わり>
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