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レイチェルと離縁後、アリオスは自分の気持ちを整理していた。
婚約者になったドレディアと学園卒業後に結婚して、いずれは国王になる。
16歳まではそう思っていて、ドレディアも王太子妃教育を頑張ってくれていた。
そして、起きたあの事件。
ドレディアとの婚約が解消になり、ひどく落ち込んだ。
数か月後に留学してきたレイチェルの学園での補佐を頼まれた。
隣国は4年制、わが国は3年制で授業の進み具合にも差があったから。
しかし、王女であるレイチェルは、学習に関しては問題なかった。
問題は令嬢たちと馴染めないことで、それ故にアリオスと共にいることが多かったのだ。
ラーズが言うには、令嬢をアリオスに近づけないように婚約者面していたらしいが。
正式に婚約してからは、レイチェルを大切にしなければならないと思った。
王女だから誰も仲良くしてくれない、そう嘆くレイチェルを守ってやりたくなった。
初夜でレイチェルが純潔ではなかったことに気づいた。
泣きながら、元婚約者に一度だけ無理やり抱かれたと言ったレイチェルがドレディアに重なったのだ。
守れなかったドレディアの代わりにレイチェルに同じ苦しみを味わわせてはいけない。
そう思い、純潔でなかったことは許した。
愛する人は一人だけ。ドレディアではなくレイチェルを愛すると決めたのだ。
一緒に生きていくレイチェルの言うことは、何でも聞いてやりたくなった。
元々、王女であったため公務に問題はなかった。
誰かに見られている時は、完璧な王太子妃だった。
その分、二人きりになると甘えてくるので、甘やかし過ぎてしまった。
2年経っても子供ができない。
もちろん、二人とも検査も受けたが問題なかった。
それから毎月のように、月のものが来るたびに泣いて縋る。
『もうすぐ妊娠するはずだから側妃は待って』
3年、4年、5年経って、さすがに王太子として待てないと気づいた。
レイチェルへの愛と跡継ぎは、別の問題なのだから。
いつもより厳しい表情で側妃を迎えることを告げると、ようやくレイチェルも同意した。
『跡継ぎを産むだけの側妃』だと。
そして、シェリーナを迎えた。
シェリーナを抱き、レイチェルとの初夜に違和感を覚えた。
レイチェルは、感じるところを知っていた。
戸惑いもなく、自らイイ位置に調整するほどに。
キスもそうだ。舌を口内に入れても当然の様子だった。
それは元婚約者との経験があったからなのかと思っていたが………
自分に経験が少なかったため、女性の反応はそんなものかと思っていた。
レイチェルとはシェリーナの話はしなかった。
妊娠したことを告げると、もう通う必要がないことを喜んでいた。
昼間にこっそりシェリーナのところに通っても、レイチェルとの時間は変わらなかった。
レイチェルが妊娠しやすい時期以外は、週に1,2度抱くペースだった。
シェリーナが出産しても、レイチェルから祝う言葉もなかった。
シェリーナの二度目の妊娠を望まれたことをきっかけに、レイチェルは豹変した。
その時にようやく気づいた。
自分は、傷ついたドレディアを同じように傷ついたレイチェルを身代わりにして愛してると思い込みたかったのだと。庇護欲と愛情を間違えた。
甘やかして傷を癒してやり、望み通りにしてやりたいと。
そんなことばかり考えていたから、周りが見えていなかった。
だけど、限界が来た。
疲れていたのだ。
シェリーナが徐々に癒してくれた。
結局、公私共に本来の自分ではなかったのだろう。
完全に呪縛が解けたように、レイチェルへの疑惑が大きくなったのだ。
何故なら、襲われたドレディアと似た境遇だと思ったレイチェルは違ったから。
そう理解した時点で、レイチェルへの愛は不確かになり温度は急激に下がった。
今となっては、レイチェルへの愛に温度があるとすれば、冷え切ったというより凍りついた。
そもそも、初夜前にあったはずの愛は初夜以降には別物になっていたのだから。
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