異世界帰りの元勇者が現代の危機を救う~謎の異世界化、原因究明の旅へ~

ゆる弥

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序章 仇討ち編

3.VS 武岩総長

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 朝から憂鬱な気分でジスパーダ中央基地へと向かっていた。

 理由は朝の飯時。朝飯を食いながら両親からの莉奈ちゃんは大丈夫なの?攻撃に胃を痛めていた。

 その時連絡があったのだ。わざわざ総長から直々に。話があるから基地へ来たら真っ先に私の元へ来いというお達しだった。
 更に胃が痛くなった。

「あぁ。面倒だなぁ」

 粒上の胃薬を口に放り込んで飲み干す。
 少し胃の痛みが治まった頃、中央基地に着いた。
 そのまま総長室に直行する。

 ────コンコンッ

「入れ」

 武岩総長の渋い声が入るように促す。

「おはようございます! 生産部隊、刀剣班班長! 武藤刃であります!」

 扉を開けると直立に姿勢を正して自分の所属と名前を告げる。

「おう。来たか。ここに座ってくれ」

 ソファーに案内されて一礼して座る。
 いかにも総長が座りような椅子からソファーに移動してきて正面に座る。武岩《むがん》 鉄槌《てっつい》その人が正面に座ると威圧感が段違いだ。スキンヘッドに傷だらけの頭。大柄な体格。とても五十歳には見えない。
 
「刃《じん》とこうして会うのは久しぶりだな? 天地のことは聞いたか?」

「はい! 天地の妻から一報が来ましたので、知っております」

「そうか。刃も魔力器官が形成されたと聞いたが? なぜ昨日のうちに俺の元へ来なかったんだ?」

 少し顔が強張ってしまう。だが、こちらにも理由はある。

「天地の妻は俺の幼馴染です。とても正気な状態には見えませんでした。フォローが必要だと思い昨日は一緒に帰りました」

「あぁ。そうだろうな。そういうことだったか。奥さんには悪いことをした。俺も直々に顔を見せよう」

「その方が喜ぶと思います」

 武岩総長は天地を可愛がっていて家族ぐるみの付き合いをしていたそうだ。だから莉奈とも面識はある。

「萬田が報告に来たがお前が面倒がって帰ったと言っていてな。それが本当か確かめる為に呼び出したんだ」

(あのやろー。偉そうなうえに、気も効かねぇ。適当なこと抜かしやがって)

「まぁ。刃のことだ。何か理由があるとは思っていた。最近鍛治の腕がまた上がったようだな?」

「現時点での最高傑作を天地には託したんですが……」

 胸に込み上げてくる思いを表に出さないように押しとどめる。
 この人の前では感情をさらけ出してしまいそうになる。

「そうだよな。やはり刀剣部隊一パーティでは足りなかったか。萬田が天地なら大丈夫と言い張ってな。いや。許可を出したのはワシだ。ワシの責任だ」

 莉奈にも同じようなことを言っていたな。もしかして無理だとわかっていて行かせたのだろうか。

「萬田が何やら変なことを言っていたが? 異世界へ召喚された記憶があるとか?」

「はい! 異世界へ召喚されたのち、勇者として魔王と呼ばれる悪の象徴を抹殺しました! その後、役目を終えたので戻ってきた次第であります!」

「よし。なら訓練場へ行くぞ」

 そういうと口角を上げると立上り部屋から出て行った。
 なぜか訓練場へと行く話になってしまったようだ。
 俺も訓練場へと急いで向かう。

 現在、刀剣部隊員が訓練の真っ最中だ。昨日秀人が死んだと聞いても通常通り訓練しているあたりは流石というべきか。

 ロッカーで戦闘服に着替えて訓練場へ入ると既に総長は準備運動をしていた。

「武岩総長? どう言った理由でここへ?」

「あぁ? 刃がどれほどの者か確認しておきたくてな」

 魔人戦闘部隊であるジスパーダには所属した時から訓練は欠かさずに行っている為、身体はなまってはいないと思う。だが、どこまで戦えるかは謎だ。

「ようし。やろうぜ。訓練用の刀で構わないか?」

「はい!」

 刃引きされた刀を受け取ると正眼に両手で構える。まずは基本となる構え。武岩総長は片手で掴み、半身で構えている。
 刀をクイッと手前に引き、こちらから攻めるように促された。

「ふっ!」

 膝を抜いて摺り足で肉薄する。
 胴を狙うが刀が身体との間に入る。
 ガードされたので一旦ひく。

「剣道やってるわけじゃねぇんだぞ?」

 背中がゾッとし、横に転がる。
 先程までいた所に刀が叩きつけられる。
 自然と息が上がっていく。

 最上段に刀を構えて振り下ろした隙を狙う。
 片手で俺の刀を受け止められた。
 
 前蹴りで腹を蹴り飛ばす。
 少し頭が下がったところにハイキック。
 刀は抑えたままだからガードできないだろう。

「やるじゃねぇか。おおおぉぉぉぉ!」

 衝撃波に吹き飛ばされる。魔力を開放したようだ。武岩総長は雷の魔力を宿している。一撃必殺といわれるような技が多い。

 自らの魔力器官も刺激して呼び起こす。俺の身体を青い炎が包み込む。

「お前の炎は青なんだな?」

 秀人も炎を宿していた魔人だった。炎の色はオレンジ。綺麗な夕焼けみたいだなと言ったら喜んでいたことを思い出す。

「青の方が高火力なんですよっとっ!」

 一歩踏み込む。強化された踏み込みは上部なコンクリートの床を破壊する。
 それに伴った速度は一瞬で間合いを詰める程だった。

「しっ!」

 俺の放った一撃は炎を飛ばす斬撃となり武岩総長に襲い掛かり、そのまま振り下ろされた刀は前へ出された刀に阻まれ、両刀とも砕け散った。

「ふっ。やるじゃねえか。期待以上だ」

 斬撃は紙一重で避けられたが、武岩総長の頬から血が滴っていた。

 周りの刀剣部隊の面々は唖然とこちらを眺めていた。

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