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16.作戦会議

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「風香さん! 戻りました!」

「お帰りなさい! ご無事でよかった! どうでした?」

 両手を真ん中で合わせながら笑顔で迎えてくれた。
 合わせた手の間で押し上げられているものに目がいってしまうが平静を装う。

「はい……やはり、放置されていたようでマップにダンジョンの印が8個出ていました。ここから一番近いダンジョンに入りましたが、この大きさのダンジョンコアでした」

 ゴトッとダンジョンコアをカウンターに置く。

「大きい……中規模でも中くらいか大きいか微妙なところですが……この規模があと8ヶ所も……」

「はい。出来たばかりのダンジョンもあるかもしれませんが、全てこの規模のダンジョンだと思った方がいいかと」

「そうですね。わかりました! マスターに報告してきます! 少々お待ち下さい!」

 慌てた様子で奥に消えていく。
 待っている間は静かなものだった。
 隣の酒場にはほぼ人がいないのだ。

 この前摘発された解放者から芋づる式に解放者が摘発された為、今は謹慎処分中だ。

 しかし、この事態は謹慎とも言ってられないだろう。

 奥からギルドマスターがやってきた。

「翔真、調査の報告感謝する。このダンジョンコアの報酬には色を付ける」

「ありがとうございます」

「それで、今後の方針だがな……多くの解放者が謹慎となったが、罰の代わりにダンジョンを攻略させる事にした。報酬も1割は出すことにした」

「なるほど。解放者の人達にも生活がありますし、中規模ダンジョンなら1割でも額が大きいですしね。懸命なご判断だと思います」

 大きく頷いてグーッと親指をあげる。

「ハッハッハッ! そうか! ありがとうよ。翔真は頭が回るな」

「数々のバイトで培われたかと」

「何!? そんな強さがありながらバイトしてたのか?」

「えーっと、俺はテイマーなのでこの蘇芳をテイムするまでは何にもできない人間だったんです」

「ほぉ。興味深いな。テイマーはテイムすると強くなるのか?」

「テイムする魔物によります。この蘇芳は魔物の中でもかなり上位に位置する魔物だったもので」

「なるほど。そういえば、話に聞く限りこの領の北の端の方へ行ってきたんだろう? 3日で帰ってくるとは早くないか?」

「ん? 早いですか? 走ればすぐ着きますよ?」

 蘇芳が耳打ちしてくる。

『ウーガ! ウウガウウガガウウガ! (翔真! 普通の人間の速度じゃないから!)』

「そうなのか?」

「翔真は、今の言葉が分かるのか?」

「はい。テイマーの能力によるものです。俺達の走る速度が普通の速度じゃないそうです。ちょっと俺には分かんないですけど、蘇芳が言うからそうなんだと思います」

「それは凄いな。ステータスが高いのか……」

「そうですね。あんまり大きい声で言えないですけどステータス、4桁なので」

「何だと!? それは本当か!? 人間の限界は3桁だと言われているのに! それが本当なら強いはずだ……」

 ツカツカと歩いてくるギルドマスター。
 ガッと両手を肩に置き目線を合わせる。

「翔真! この領を救う為に力を貸してくれ!」

「分かりました。でも、立て直すまでですよ? 元々一週間ぐらいの予定だったんで」

「あぁ! それでいい!」

「えぇ!? 翔真くん、居なくなっちゃうんですか!?」

 いつの間にか下の名前呼びに昇格していた。

「はい。元々その予定だったので」

「戻って何か予定あるの?」

 すぐ近くまで来て顔を見上げてくる。
 この角度の上目遣い。

 ぐふっ!
 この光景!
 なんて破壊力なんだ!

「よ、予定はないっす……だから……少し長くいても問題ないっすよ……」

 ま……負けた。
 俺のハートが暴れ回っているぜ。

「本当ですか!? よかった……」

 風香さん?
 その反応は勘違いしちゃうぜ?

「ま、まずは南側も見てこないとですかね?」

 なんとか話を逸らした。

「そうだな。そっちも確認して、全体的に放置されていたダンジョンがどのくらいあるかで人員の配置を考えるか。とりあえず、このコアの報酬だ」

 ギルドカードに表示されたのは1000万であった。

「それじゃ、明日は南側を調査してきます!」

「あぁ! 頼むぞ!」

◇◆◇

次の日

「よっしゃ! 蘇芳! ちゃっちゃと行ってきて報告しよう!」

『オッケー! じゃあ、全速だね?』

「あぁ、全速で行って全速で戻ってくる!」

ドンッッッ

 先程までいた2人が消える。

 全速で走ってるけど、どう頑張っても蘇芳には適わねぇな。

 蘇芳は余裕で走っている。
 30分くらい走ると南側の端に近づいた。

「マップ!」

 ここは、悲惨だった。
 赤い点が北の倍の16ヶ所もあったのだ。

「蘇芳! これは一大事だ! 放っておくとダンジョンが繋がって大規模ダンジョンになっちまう!」

 この領に1つある大規模ダンジョンは中央に近いところにある。
 これ以上大規模ダンジョンが出来たとなると、領の危機だ。
 ダンジョンは、いうなれば地下を侵食されると同意である。
 大規模ダンジョンが大きくなれば地上が侵食される可能性もゼロではない。

『これは、早く報告しないと!』

「あぁ! 全速で戻るぞ!」

 再びギルドに戻る。

◇◆◇

 ギルドに着くと。

「風香さん! 大変です!」

「お帰りなさい! もう調査してきたんですか?」

 ポワーンとした雰囲気で対応されるとこちらも気が抜けそうになる。

「自体は一刻を争います!」

「は、はい! マスター呼んできます!」

 奥に行くとマスターを連れてきた。

「もう調査してきたのか!?」

「はい! 大変です! 南側は半径10キロにダンジョンが16ヶ所もあります!」

「何!? それは一大事だ! ダンジョン同士が繋がったら……」

「そうです! だから、すぐに攻略に向かわないと!」

 ギルドマスターは、腕を組んで少しの間考えていた。

「よし……翔真は南側のダンジョンを片っ端から攻略してくれ! ダンジョンコアを持つ用の魔道具はあるか?」

「あっ、蘇芳が異空間魔法使えるんで」

「なら大丈夫だな! 翔真が作戦の要だ! 頼むぞ! 北側と南側の応援には謹慎中の奴らを向かわせる!」

「わかりました! 直ぐに行ってきます!」

「食料とかは大丈夫か!?」

「元々用意してるのがあるんで大丈夫です! 大規模ダンジョン攻略しようとしてたんで」

「あぁ、お前だったのか。ランク低いのに大規模ダンジョン潜りたいって言ってた奴は。今回のでランクが嫌でも上がるだろう。目標には近づくんじゃないか?」

「まぁ、そうっすねぇ。行ってきます!」

 ダッシュでギルドを出ようとする。

「翔真くん、待って!」

 風香さんに呼び止められる。
 カウンターから出てきて近づいてくる。

「無茶しちゃダメだよ?」

「無茶はしないっすよ! 全力で攻略してきます!」

「危なくなったら逃げてね? 全部を背負わなくていいからね?」

「うっす!」

「戻ってきたら、一緒に祝勝会で飲み行こ?」

 上目遣いで言われる破壊力たるや。

 でも……
 それ、よくある死亡フラグじゃ……?

「絶対戻ってきます! 一緒に飲みに行きましょう!」

 いや、だから死亡フラグ……

 フラグへし折ってやらァァァ!
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