転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥

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55.魔物の波

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「みんな! 構えて! 何かが来るよ!」

 何かが迫ってくる音が響き渡る。
 重低音が周りから聞こえてきていると思う。
 前からだけじゃない。

 これはまずいぞ。

「後ろは誰がいる!?」

「俺が対処すらぁ! 安心しろ! そっちは任せた!」

 担任が殿を務めていたようだ。
 それなら安心か。
 実力はわからないが、学院の教師をしているのだ。それなりの実力はあると思っていいだろう。

「オレたちはどうすればいいかな?」

 少し慌てたように僕の指示を仰ごうとするバアルくん。
 その目にはしっかりと後ろのカーラさんを守ろうという意思が感じ取れた。

 そうだよ。僕たちには守りたいものがはっきりとしている。
 魔物を後ろには通さない。

「僕が前でゴブリンの相手をする。この狭い中だと大技が使えない。万が一通してしまったら、始末してほしい」

 そのお願いにコクリと頷く。
 とは言ったものの、ゴブリンごときに後れを取ることは許されない。この程度で後ろに通すようなら僕はオロチ師匠の弟子を名乗れない。

 それほどの汚名となる。

「おいで『竜斬丸』」

 手に馴染む安心感を感じながら抜刀の構えを取る。
 多数の足音が重低音となって近づいてくる。
 そろそろ見えてくるころだろう。

 視界へおさめられるところに重低音の正体が現れた。

「「「グギィィ!」」」

 やはり大量のゴブリンのようだ。
 だらしなく口からは涎を垂らしながら近づいてくる。
 ゴブリンは女性を襲うことで有名だ。

 だからこそ。僕たちはアイツらを後ろに通すわけにはいかない。
 前傾姿勢をとり、足を半歩引く。
 タイミングを見計らう。

「リオンくん! 一人で大丈夫!?」

 エリスさんの叫びが聞こえる。
 その声で僕の体に活力が漲ってきた。
 大丈夫だよ。心配しないで。

「エリスさん、リオンくんなら大丈夫だよ。安心して見守ろう?」

 バアルくんが僕の代わりに応えてくれる。
 今はタイミングを見誤るわけにはいかない。
 だから、返事は出来ない。ごめんね。エリスさん。

 その心配してくれる声が力をくれたよ。
 僕はね。エリスさんが、バアルくんが、カーラさんがいるだけで体に力が漲ってくるんだ。これは仲間意識だと思う。

 里にいるだけではこんな気持ち、味わえなかったと思うんだ。
 だから、感謝しているよ。みんなが友達になってくれたこと。
 この程度で、なんで物思いに耽っているんだろうね。

 目の前に来ていたゴブリン。

 腰を捻り、渾身の力で刀を振るう。
 光が煌き、魔物たちを光の一閃が襲う。
 一瞬で前にいた数体が上下真っ二つになる。

 返す刃で袈裟切りにし、また返し切り上げる。
 淀みなく流れる様に刀を振るっていく。
 
 その一閃は必然の流れ。
 次の一閃の為の、今の一閃。
 無駄な攻撃は一つもない。

 僕はこの時のことをあまり覚えていない。
 無意識下で今まで培ってきたものが出ていた。
 後ろの仲間たちを守らなければ。

 この境地が仲間を得た僕の至った一つの到達点かもしれない。そう思えるほどにこの時の動きは今まで発揮できなかったほどにいい動きをしていた。

 足から伝える力、それを伝達する腰の捻り、最後に刀へ力を込める腕。すべての流れが自然で僕は刀も体の一部のように腕の延長のように感じていた。

 気がついた時には、目の前には粉々に切り刻まれたゴブリンの亡骸だけが転がっていた。なんとか耐えた。そう自分の中で安心した。

「後ろは!?」

「心配すんなっつったろぉ! 全員無事だぁ! ゴブリンごときに後れなんざとらねぇよ!」

 その担任の言葉に肩の荷が下りた。
 ホッと胸をなでおろして、後ろを振り返るとポケッとしているバアルくん、エリスさん、カーラさんがいた。なんでそんな顔しているんだろう?

 ひとまず、無事でよかった。

◇◆◇

 リオンくんの後ろにいたオレは、万が一ゴブリンが後ろに来たことを想定して剣を構えていた。こんな洞窟で魔法をぶっ放すわけにもいかないからだ。

 だからこそ、リオンくんも刀を出して応戦しようとしているのだから。これがもう少し広い空間であればカーラさんとエリスさんの合成魔法とかで対処するんだが。

 目前へと迫るゴブリンに対して静かに構えているリオンくん。この状況下でそこまで冷静でいられる神経がすごい。鬼気迫る雰囲気は背中から感じる。

 たぶんだけど、オレたちには指一本触れさせるつもりはないんじゃないかな。そういう気概を感じるよ。信用していないってわけじゃないと思うんだ。

 ただ、魔物にはオレたちにふれて欲しくないんだと思う。それはオレたちも一緒なんだけどね。リオンくんをオレも、後ろの二人も心配してるんだ。いくら強いと言っても、数の暴力には敵わないんじゃないかな。

 そんなことを思っていたオレは自分を恥じた。すぐ目の前まで迫ったゴブリンは光が走った瞬間真っ二つになった。ただ、それだけじゃない。次々と光が走っていくのだ。

「す、すごい……」

「リオンくん……」

「ウチらが背にいるからなのかな?」

 今までのリオンくんも凄かった。でも、今回のこの雰囲気はまた全然違う。なんか流れる様に動いていて、力を加えていないような。そう動くことが決まっている様な。

 どういったらいいかわからないけど、動きが自然すぎて。

 オレたちは密かに、リオンくんの隣で闘うことを目標としていたんだ。けど、まだ隣には立てないのかな?

 まさか、これほどの高みにいるなんて。

 振り返ったリオンくんの顔はいつもと変わらない雰囲気に戻っていた。
 後ろが無事なのも確認するとホッとしてた。
 なんかオレたちをみて首を傾げている。

 まだまだ。リオンくんには敵わないな。
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