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第三章 挑 戦
しおりを挟む台風生命の一生は短い。
赤道付近で生まれたとき、その意識が芽生え、大気に運ばれ移動を続けながら巨大化し、温帯低気圧になりやがて、小さくなって、その命が終わる。
9日後、台風21号は、人柱の確認を終えた生命体は、人の命の絶命と共に、約束通り、予定されていた規模よりはるかに小さな台風の姿として日本列島付近を移動し、さらに規模を弱めながら気圧を分散させ、オホーツク海へ出たあたりで寿命を迎えてくれた。
装置の接続をすべてほどき、枝川は、解放された。
いつものことだが、かなり危険な状態だ。
すぐに専用の処置を施すため専用の病院へ向かう。
同じ機内には、テレビ局の取材班がこの交渉のもようを全国へ伝えていた。
少し前に意識を取り戻したばかりだというのに枝川は力をふり絞り、レポーターのマイクとカメラに向かい最後の任務を果す。
「交渉は成功です。超大型と予想されていました21号は、これ以上の規模に成長しない事を約束してくれました」
「皆さん、尊い1名の殉職者の冥福を共に祈りましょう」
これで台風の被害は軽度なものと成り、程よい雨のめぐみを日本に与えてくれた。
枝川には、体調を整え、2ヵ月後には、更なる重大な大仕事が控えている。
それは、南関東にいずれ発生する大規模地震との交渉だ。
この計画は、国家プロジェクトで進行している。
地震交渉士も枝川を含め6人すべてが参加すると決定している。
失敗は絶対許されない。
地震生命体は台風生命体よりも交渉が難しく、そして…人柱の人数も…かなりの数が必要なのだ。
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