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第二章
祀られた意味
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お地蔵さまの前で足を止めると、美乃利さんは持ってきた花を数本花瓶の様な器に挿し入れた。
台座の上に立つ4~50センチほどのお地蔵さまは、かなり古いものの様で一部崩れかけた所も見える。
「これが祀られたのはいつなんですか?」と、美乃利さんに訊いてみるが「さあ、知りません。」と云われた。
僕が知る限りでは、よく交通事故で亡くなった人がいると、そこの場所にお地蔵さまが祀られていた。
でも、ここは敷地の中だし.....。
美乃利さんは手を合わせると、その後で「ここの欠けている所、私の怪我した場所と一緒なんですよね。」という。少し声のトーンが変わった気がして、彼女の方を向いてみると、困った様な表情をしていた。
「それって、....?」
「ほら、昔話で身代わり地蔵っていう話があったでしょ?私、勝手にこのお地蔵さまはそれじゃないかって思ってて。」
「あー、おじさんにそう云ったんだね........」
おじさんが云った意味が分かった。美乃利さんは自分の怪我とお地蔵さまの欠けをそういう風に捉えたんだ。
それにしては、実際に怪我をしてしまったら”身代わり”ではない気がする。
「本当ならこの腕、失くしていたかもしれないんです。」
「え?.....そんなにひどい怪我だったの?」
「ええ、でも神経も傷めずに回復したのは奇跡だってお医者さんも云ってて。だから、私も帰って来た時にはお参りしてます。」
「そうか、.......実は、......亡くなった母の書いたものが出てきて、そこにもこのお地蔵さまの事が書かれていたんだ。母も何かそういう経験をしたんだろうか。まだ途中までしか読んでないんだけどね。」
僕はまじまじとお地蔵さんをみつめ、あの原稿用紙の事が気になった。
「私にも見せてもらっていいですか?」
「え、....うん、いいよ。」
美乃利さんと僕は、お地蔵さまにお辞儀をすると家の方に歩き出す。
観光もいいけれど、あの手紙の意味を早く知りたいと思った。それは母親が残した僕へのメッセージの様な気がして。
母が使っていた部屋に戻ると、美乃利さんが「うわー」と云いながら部屋中を見廻した。
「小学生の頃に一度だけ入った事があったけど、なんか机とか昔のって感じですね。レトロで素敵だぁ~」
僕が母の赤い箱を机の上に置くと、今度はそれに見入ってしまい「手作り~。おばさんって器用な方だったんですね、この赤っていうのが結構オシャレだわ。」と箱を手に取って眺めている。
「その中に原稿が入ってて」と云うと、美乃利さんは慌てて箱を置き蓋を開けた。
「これですか、結構枚数ありますねぇ。小説家になりたかったんでしょうか。」
「いや、そういう感じじゃないけど....。」
取り敢えず、僕が読んだ所までを手渡した。飼い犬が病気になって、毎日お地蔵さまに手を合わせたという所まで。
その先を読もうかと思ったが、美乃利さんが読み終わるまで待っていると、「うちってペット飼うのダメなんですよ。昔は飼ってたんですねぇ。」と首を傾げる。
「え、そうなの?どうして?こんなに広い屋敷だし庭も広いから、何匹でも飼えそうだけど。」
「小さい頃お父さんに飼いたいって云ったら、この辺りは動物が早く死ぬって。おばさんの飼ってた犬もそういう事だったのかなぁ。.....続き、.....死んだって書いてありますか?」
「え、...ああ、いや、これから読む所。」
そう云うと、僕は続きのページに目を通していく。
台座の上に立つ4~50センチほどのお地蔵さまは、かなり古いものの様で一部崩れかけた所も見える。
「これが祀られたのはいつなんですか?」と、美乃利さんに訊いてみるが「さあ、知りません。」と云われた。
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でも、ここは敷地の中だし.....。
美乃利さんは手を合わせると、その後で「ここの欠けている所、私の怪我した場所と一緒なんですよね。」という。少し声のトーンが変わった気がして、彼女の方を向いてみると、困った様な表情をしていた。
「それって、....?」
「ほら、昔話で身代わり地蔵っていう話があったでしょ?私、勝手にこのお地蔵さまはそれじゃないかって思ってて。」
「あー、おじさんにそう云ったんだね........」
おじさんが云った意味が分かった。美乃利さんは自分の怪我とお地蔵さまの欠けをそういう風に捉えたんだ。
それにしては、実際に怪我をしてしまったら”身代わり”ではない気がする。
「本当ならこの腕、失くしていたかもしれないんです。」
「え?.....そんなにひどい怪我だったの?」
「ええ、でも神経も傷めずに回復したのは奇跡だってお医者さんも云ってて。だから、私も帰って来た時にはお参りしてます。」
「そうか、.......実は、......亡くなった母の書いたものが出てきて、そこにもこのお地蔵さまの事が書かれていたんだ。母も何かそういう経験をしたんだろうか。まだ途中までしか読んでないんだけどね。」
僕はまじまじとお地蔵さんをみつめ、あの原稿用紙の事が気になった。
「私にも見せてもらっていいですか?」
「え、....うん、いいよ。」
美乃利さんと僕は、お地蔵さまにお辞儀をすると家の方に歩き出す。
観光もいいけれど、あの手紙の意味を早く知りたいと思った。それは母親が残した僕へのメッセージの様な気がして。
母が使っていた部屋に戻ると、美乃利さんが「うわー」と云いながら部屋中を見廻した。
「小学生の頃に一度だけ入った事があったけど、なんか机とか昔のって感じですね。レトロで素敵だぁ~」
僕が母の赤い箱を机の上に置くと、今度はそれに見入ってしまい「手作り~。おばさんって器用な方だったんですね、この赤っていうのが結構オシャレだわ。」と箱を手に取って眺めている。
「その中に原稿が入ってて」と云うと、美乃利さんは慌てて箱を置き蓋を開けた。
「これですか、結構枚数ありますねぇ。小説家になりたかったんでしょうか。」
「いや、そういう感じじゃないけど....。」
取り敢えず、僕が読んだ所までを手渡した。飼い犬が病気になって、毎日お地蔵さまに手を合わせたという所まで。
その先を読もうかと思ったが、美乃利さんが読み終わるまで待っていると、「うちってペット飼うのダメなんですよ。昔は飼ってたんですねぇ。」と首を傾げる。
「え、そうなの?どうして?こんなに広い屋敷だし庭も広いから、何匹でも飼えそうだけど。」
「小さい頃お父さんに飼いたいって云ったら、この辺りは動物が早く死ぬって。おばさんの飼ってた犬もそういう事だったのかなぁ。.....続き、.....死んだって書いてありますか?」
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