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第五章

接点

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 疑問は残る。真壁家の過去と母の過去の話。それがお地蔵さまと繋がった。でも、じゃあ、どうして峰子さんや母は音信不通になって実家を捨てたのか。身を隠す必要はなかったと思う。お地蔵さまがいわく付きでも、願い事をしなければいいだけの話だ。

「峰子さんは.......どうして家を出たのですか?」

 聞いて良かったのかどうか。

「......私は、......お地蔵さまの事を聞いて知っていました。その上で、.......願ってはいけない事を願った。」

「...........誰かがその為に亡くなった?」

「そうです。.......人を殺してしまった。」

「いや、.....でも.....それは、........」

 なんと云えばいいのか迷った。結果、誰かが亡くなったとして、はたしてそれは殺人か?

「.....誰を助けたかったのですか?」

 隣で俯いたままの水野さんが、小さな声で峰子さんに訊ねる。
ハッとした。そんな事を訊いたら峰子さんの心の傷は増えるばかり。でも、水野さんはじっと動かずに返事を待っている。


「......初めて好きになった男性です。事故に遭って.....危ないかもしれないと聞かされて、.......」

「亡くなったのは?」

「水野さん!!」

 怖かった。峰子さんの秘密を暴くようで。そして、なんとなく母の事も想像できてしまう。

「.....彼の代わりに親友だった子が......事故に遭って亡くなりました。」

 僕は頭を抱えてしまった。まさか本当にそんな事が現実となるなんて。偶然の一致であってほしい。

「彼は後遺症が残って、しばらくは入院が必要で。ただ、私は怖くなって逃げたんです。親友を身代わりに、なんて考えてはいなかった。でも、結果的にそうなってしまった。......怖かったんです。」

「奥村くんのお母さんの事、いつ知ったんですか?実家とはずっと疎遠だったのに、接点もなかったはず。」

 水野さんは息を整えながら訊く。
なんだか峰子さんに尋問しているような気になる。でも、そこは僕も知りたいところ。

「祐二くんが生まれた病院で出会いました。本当に偶然でした。」

「病院で?」

「そう、.....私は病院で食事を作っていて、その時に知り合いました。初めは真壁家の人だとは分かりませんでしが、故郷の好きな食べ物のを話していると北海道出身だと分かって。そこから色々話す機会があって、遂に実家が真壁だと知って。」

「母は峰子さんが父親の姉だと知ったのですか?」

「......初めは知りません。私が隠していたから......。ただ、......祐二さん、........あなたの命が危ぶまれた事態になった時、.......」

「.........え?僕の?」

 僕の名前が出されて、不思議に思った。命の危機に遭遇した事なんて母から聞いた事がなかった。
自分では丈夫に育ってきたと思っている。それなのに?

「赤ちゃんの突然死、っていうのを聞いた事がありますか?」

「......いえ、僕は......」

「私は聞いた事あります。有名人のお子さんがそういう事で亡くなった話を聞きました。」

 水野さんは僕の前に手を出すと云った。

「祐二さんもそれに近い状態になって、救急で運ばれて来ました。取り乱した彼女に、私が言いました。今こそ願いごとをする時では、と。」

「......え?」

「びっくりした顔で私を見た時、きっと彼女はもうすでに願いごとをしたのだと思いました。」

 峰子さんの言葉に違和感を覚えた。この東京でお地蔵さまもないのに、どうやって願いごとを、と思ったんだ。




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