胸に宿るは蜘蛛の糸

itti(イッチ)

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ヒミツ

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 こんなに乱暴な抱き方。
普通ならしないだろうが、この時の俺は自分の欲望だけを吐き出す事しか頭になかった。
じっとりと汗ばむ背中が蛍光灯の光を反射して輝いて見える。それを見ながら何度も突いた。我慢できずに喘ぐトンちゃんは、俺の下で震えながらも腰を振る。そんな姿に興奮を覚える俺は、夢中で打ち付けると絶頂に達しトンちゃんの中で果ててしまった。


 ぐったり倒れ込むとシーツを掴む。

 隣でうつ伏せのまま、トンちゃんは肩で息をしている。


 荒い息遣いが止んで静かになった部屋の中。シーツの擦れる音だけが耳に聞こえてくる。
ベッドがきしみ、トンちゃんの身体が起き上がるのを感じた。でも、声を掛ける事も姿を見る事も出来なかった。

 やがて、扉の開閉する音がして部屋の空気は孤独の色に染まる。
その時初めてどうしようもない罪悪感に苛まれた。自分のした事をまるで映像を巻き戻すように頭の中で再生する。
俺はなんてバカな事を................


 
 その晩は中々眠れずに、トンちゃんの部屋から洩れる微かな物音に敏感になった。

 翌朝、気付けば陽はすっかり昇りきり、時計の針も12時を指している。
怠い身体を起こして、自分の間抜けな格好を目の当りにし、慌てて下着を穿くとベッドの淵に腰を降ろす。
気分は最悪だった。なんとも言いようのない気怠さと、胸の奥に消えないままの燻りを抱えたまま部屋を出ると母屋へと行く。

 誰もいない母屋の台所。冷蔵庫に貼られた付箋には母の字で『今日は残業。晩ご飯は自分で食べて』と書かれていた。ホッとした。今日の俺は母親の顔を見るのも無理な気がする。もちろんトンちゃんの顔も、だ。

 
 軽い食事をとって夕方までぼんやり過ごしていると、祐斗からメールがきた。
なんとなくうしろめたい気分になる。祐斗とあんな事をしたその晩に、俺はもっと酷いことをトンちゃんにしてしまった。

『親が実家に行くからひとりなんだけど、明日の晩泊りに来ない?』

 祐斗からのメールを見て、これはこの家を離れる口実が出来たと思った。
トンちゃんの顔も母さんの顔も、ましてや父さんは明日青森から戻って来るし、絶対顔を会わせたくない。

『今夜から行ってもいい?』

 すぐに返信をすると、祐斗からも『OK』と帰って来る。
祐斗に対する後ろめたさはこの際置いといて、此処から逃げる様に俺は外泊の準備を始めた。







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