47 / 205
閉じ込めた気持ち
しおりを挟む結局、夜遅くに祐斗の両親が戻って来て、俺の話は途中のまま朝になると学校に行く時間となった。
バスに揺られて学校に着くと、またありきたりな日常が待っている。
授業を受けて、昼休みには菓子パンを食って、放課後になると急に緊張し出す俺は、本当に意気地なしだ。
「今日は大丈夫なのか?もう流石に泊めてやれないぜ。」
祐斗に云われて「分かってるよ」と頷いた。
どうしたって家からは逃れられない。
母さんの顔を見るのが怖いなー.........
祐斗からエールを送られて、ドキドキしながら家の前に着くと、暫く足が出なくて。一歩を踏み出すのが怖かった。でも、仕方ない。何か聞かれたらその時はその時。
よし、と声を出して自分を鼓舞すると玄関へと向かった。
玄関の扉に鍵がかかっている事を願いながら、ドアノブをカチャっと回せば、簡単に回って開いてしまう。
------いるのかよ~
ちょっとビビりながらドアを開けて中に入ると、「ただいまー」と声を掛けた。
「おかえり」という母さんの声がして、俺は背中にツツーっと冷汗が流れる感覚になる。
居間に入る前に台所に行くと、水を一杯飲んで息を整える。
鞄を抱えて居間に入ると、そこに座って居る母の姿があった。見る限りでは、怒っている様子はないが、小学生が宿題をしないで遊んでいるのとは訳が違い、怒られる内容が悪すぎた。
「あ、あの、.....祐斗の親、帰りが遅くてさ、昨日は俺がラーメン作って食べたんだ。」
そんなどうでもいい事を告げると、「そりゃあ、ご飯まで食べさせてもらおうなんて、図々しすぎるでしょ。」と冷たい言い方をされる。確かにその通りなんだけど......
仕方なく鞄を持って離れの部屋に逃げようとした俺に、「ハルキ、お父さんの何を知っているの?」と訊かれ心臓が飛び出そうになった。
いきなりの確信をつく質問だ。
何て答えればいいのか。知らないと云ってしまおうか。一瞬の間に色々な言葉を巡らせるが、どれも納得させる言葉ではなかった。
「それは、.......」
俯いたまま言葉が途切れた俺は、じっとしているしかなかった。
「ハルキも子供じゃないから、色々分かる年頃よね。......それはお母さんも同じよ。ハルキの云いたい事は分かってる。だけど、それは云わないで欲しいの。」
母さんの言葉にショックを受けた。すべて知っている様な口ぶりで、でも、父さんの相手の事までは知らないだろうと思ったが、敢えて自分から云う必要もないのかも。
「かあさん、........俺、変な事云ってごめん。」
「.........いいのよ。いずれ気が付く時が来るかもって、私もどこかでは諦めていたんだから。」
母さんはそう云うと、身体を起こして立ち上がり台所の方へと消えて行った。
母さんは、トンちゃんと父さんの事を気付いていたのか?まさか、とは思うがそれを確認する方法もない。
俺に何も云うなという事なら、そうするしかない。父さんにも何も云わない事にしよう。
なんとなく心の中はモヤッとしたままだけど、全てをさらけ出してしまうのは怖い気がした。
0
あなたにおすすめの小説
Innocent Lies
叶けい
BL
アイドルグループ『star.b』のリーダーを務める内海奏多。
"どんな時でも明るく笑顔"がモットーだが、最近はグループ活動とドラマ出演の仕事が被り、多忙を極めていた。
ひょんな事から、ドラマで共演した女性アイドルを家に送り届ける羽目になった奏多。
その現場を週刊誌にスクープされてしまい、ネットは大炎上。
公式に否定しても炎上は止まらず、不安を抱えたまま生放送の音楽番組に出演する事に。
すると、カメラの回っている前でメンバーの櫻井悠貴が突然、『奏多と付き合ってるのは俺や』と宣言し、キスしてきて…。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる