64 / 205
腹は満たされた
しおりを挟む
人生で初めてのホームシックとやらにかかってしまった俺。
大学の授業が始まって、未だに親しい友人を作る事が出来ていない。まあ、最初から自分の性格上難しいとは思っていた。が、講義を受ける時に横に座った女子からは何度か視線を感じて、余計に緊張してしまった。
昼休みの学食を選んでいると、ふいに俺の後ろから「ここはカツ丼が美味しいよ」と声を掛けられて。
振り返って見たら先日のバイトの人がそこに居た。笑みを浮べて俺の顔を見ると、「やあ」と爽やかな声で云われて焦る。一応、二度も出会っているから顔は分かっている。でも、気軽に話せる相手じゃない気がした。ひとつ先輩だし.....。
「ぁ、どうも」
軽く頭を下げるとそう云ったが、その後の言葉が出てこない。
「大学で会うのは初めてやな。学部は?」
「え?...ぁ、経済学部、です」
関西弁?なんかイメージと違う。
そう思った俺はついカレの顔をじっと見つめてしまった。
「なんか顔に付いとるかな?....じっと見られると恥ずかしいんやけど」
カレはそう云うと自分の手を頬に当てて笑った。俺も一瞬恥ずかしくなって、目を逸らすと「すみません」と謝る。なんだか照れくさくなった。
「良かったら一緒に喰おうか?」
「.........はい」
二人して食堂に入って行くと、おすすめのカツ丼をそれぞれ注文して奥のテーブルに着く。
俺たちのテーブルには他に座って居る生徒もいたが、じっとこちらを見たかと思ったら席を空けてくれて二人だけになった。
「この間一緒に来た人は元気?」
そう訊かれて、一瞬祐斗の事かトンちゃんの事か分からななくて。箸を持ったままカレの顔を窺う。
「あ、年上の人の方。もう一人はキミの友達やろ?」
「あ、はい。.......元気だと思います。仕事が忙しくて会ってないんで分かりませんが、具合悪かったら連絡くれると思うし。」
「そう、東京から来たって云ってたから、キミしか親類はおらんのやな。」
「.......ええ、まあ、そうですね。おじさんとは結構親しいんですか?」
「いや、店に来てくれた時しか話さんから。でもいい人ぽいし話しやすそう。」
「はい、......いい人ではあります。」
俺は箸を割ると漸くカツを一口頬張った。サクッという音が自分の鼓膜に響いて、カレが云った通り美味しさが伝わってくる。玉子もフワフワで、東京で食べたカツ丼よりも数倍美味かった。
「なっ?美味しいやろ?」
前に座って俺の食べる姿を微笑ましく見ているカレが得意げに云った。
「はい、美味しいですね。学食とは思えない。」
俺の胃袋にどんどん飲まれていくカツ丼を褒め乍ら、二人で嬉しそうに食べていくとあっという間に完食してしまう。最後に水を飲むのがもったいないぐらい、味わい深かったカツ丼に魅了された俺は、これから毎日学食のメニューはコレにしようと思った。
大学の授業が始まって、未だに親しい友人を作る事が出来ていない。まあ、最初から自分の性格上難しいとは思っていた。が、講義を受ける時に横に座った女子からは何度か視線を感じて、余計に緊張してしまった。
昼休みの学食を選んでいると、ふいに俺の後ろから「ここはカツ丼が美味しいよ」と声を掛けられて。
振り返って見たら先日のバイトの人がそこに居た。笑みを浮べて俺の顔を見ると、「やあ」と爽やかな声で云われて焦る。一応、二度も出会っているから顔は分かっている。でも、気軽に話せる相手じゃない気がした。ひとつ先輩だし.....。
「ぁ、どうも」
軽く頭を下げるとそう云ったが、その後の言葉が出てこない。
「大学で会うのは初めてやな。学部は?」
「え?...ぁ、経済学部、です」
関西弁?なんかイメージと違う。
そう思った俺はついカレの顔をじっと見つめてしまった。
「なんか顔に付いとるかな?....じっと見られると恥ずかしいんやけど」
カレはそう云うと自分の手を頬に当てて笑った。俺も一瞬恥ずかしくなって、目を逸らすと「すみません」と謝る。なんだか照れくさくなった。
「良かったら一緒に喰おうか?」
「.........はい」
二人して食堂に入って行くと、おすすめのカツ丼をそれぞれ注文して奥のテーブルに着く。
俺たちのテーブルには他に座って居る生徒もいたが、じっとこちらを見たかと思ったら席を空けてくれて二人だけになった。
「この間一緒に来た人は元気?」
そう訊かれて、一瞬祐斗の事かトンちゃんの事か分からななくて。箸を持ったままカレの顔を窺う。
「あ、年上の人の方。もう一人はキミの友達やろ?」
「あ、はい。.......元気だと思います。仕事が忙しくて会ってないんで分かりませんが、具合悪かったら連絡くれると思うし。」
「そう、東京から来たって云ってたから、キミしか親類はおらんのやな。」
「.......ええ、まあ、そうですね。おじさんとは結構親しいんですか?」
「いや、店に来てくれた時しか話さんから。でもいい人ぽいし話しやすそう。」
「はい、......いい人ではあります。」
俺は箸を割ると漸くカツを一口頬張った。サクッという音が自分の鼓膜に響いて、カレが云った通り美味しさが伝わってくる。玉子もフワフワで、東京で食べたカツ丼よりも数倍美味かった。
「なっ?美味しいやろ?」
前に座って俺の食べる姿を微笑ましく見ているカレが得意げに云った。
「はい、美味しいですね。学食とは思えない。」
俺の胃袋にどんどん飲まれていくカツ丼を褒め乍ら、二人で嬉しそうに食べていくとあっという間に完食してしまう。最後に水を飲むのがもったいないぐらい、味わい深かったカツ丼に魅了された俺は、これから毎日学食のメニューはコレにしようと思った。
0
あなたにおすすめの小説
Innocent Lies
叶けい
BL
アイドルグループ『star.b』のリーダーを務める内海奏多。
"どんな時でも明るく笑顔"がモットーだが、最近はグループ活動とドラマ出演の仕事が被り、多忙を極めていた。
ひょんな事から、ドラマで共演した女性アイドルを家に送り届ける羽目になった奏多。
その現場を週刊誌にスクープされてしまい、ネットは大炎上。
公式に否定しても炎上は止まらず、不安を抱えたまま生放送の音楽番組に出演する事に。
すると、カメラの回っている前でメンバーの櫻井悠貴が突然、『奏多と付き合ってるのは俺や』と宣言し、キスしてきて…。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる