胸に宿るは蜘蛛の糸

itti(イッチ)

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俺の気持ちは伝わらない?!

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 トンちゃんの言葉が気になる。もちろん同年代の友人は必要だが、今そんな事を云わなくても.......

「大学の友達はさ、暇があればカラオケやナンパばかりで、そう云うのはあんまり。トンちゃんは大学生の時どうだったのさ」

 食後にコーヒーを飲みながら、ソファーに腰かけて云う。トンちゃんが大学生の頃、俺はまだ小学生。一緒に暮らし始めたのはトンちゃんが大学3年か4年の時。俺の記憶は、遊んでもらった事しかない。

「オレは2年生迄は結構遊んでたよ。勿論バイトはしてたけど、実家を出てたし、友達と遊ぶ事も多かった」

    トンちゃんが友達と遊んでいる姿が想像出来なくて、変な感じ。

「離れの家に来てからは?」と、聞いた所で、一瞬父さんの顔が俺の脳裏を掠める。
    俺の知らない所で、父さんとトンちゃんが、と思うとその後は口をつぐんだ。

「就活とバイト。その頃からは友達とも距離が出来たかな」
    そう云うと苦笑いを浮かべ、空のコーヒーカップを持つと立ち上がった。きっとトンちゃんも父さんの事を思い出したんだろう。俺たちの間には、微妙な空気が流れた。

「俺だってたまには友達と遊ぶさ。バイトもやりがいがあるし。でも今はトンちゃんとの時間が大事なんだよ」

    俺の気持ちはどうしたら分かってもらえるのか。歯痒くてイライラした。
    コーヒーカップを持つと、俺もトンちゃんの後に付いて行く。

    カップを洗うトンちゃんの背中を覆うようにそっと抱きしめれば、「今日はありがとう。作り置きの料理で、しばらくは楽が出来そう。助かったよ」と、俺に帰る様にと言っているみたいだ。

「このまま泊まってもいい?」

    トンちゃんの言葉は無視して、そう聞いてみるが、内心はドキドキしていた。

「中条くんの看病とか、バイトで疲れてるだろう?今日は帰ってゆっくり休んだ方がいい」

「別に疲れてなんかないよ。俺はトンちゃんと一緒に居たいんだ。俺が泊まるのは迷惑?」

「・・・迷惑じゃないけど」

「じゃあ泊めてよ」

    俺のしつこさに呆れたのか、トンちゃんは「仕方ないな」と呟くと、俺の手からすり抜ける様に離れていく。
    強引だとは思うが、俺は気持ちを伝えたくて、こんな風に迫る事しか出来なかった。
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