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24 アルミ箔のオンナ 6
しおりを挟むドキリとした。
常々接する女性に対して、仕事上の付き合い以外の何物でもない気持ちとは違う、初めての感情。それが今、俺の中に宿った気がした。
「野嶋さん、……」
と、思わず何かを言いかけて、言葉に詰まる。
その先は、声に出してはいけない気がする。
なのに…
「今夜、時間あります?」
思わず出た言葉に、「…ぇ、はい、時間はありますけど。」と答える彼女。
戸惑いを隠せない顔で俺を見た。
「あ、別に変な誘いではなくて。エクセルで補助的な資料を作っておきたくて、教えて貰えたらと…」
そんな取って付けたような理由を言えば、「いいですよ。」と、快く返事をしてくれた。
「あ、りがとう…。じゃあ自分のパソコンで教えて貰っていいかな?」
「はい、どこでしますか?会社だと残業申請しないといけないですよね。」
そう言われて、そこまで考えていなかった事に気づいた。
「なら、……家に来てもらってもいい?あっ、変な誘いじゃないから‼」
慌てて言った俺の表情が可笑しかったのか、野嶋さんは口の前に手を持って来ると申し訳なさそうに笑った。
………ふぅー
女性相手にこんなテンパるのは初めて。
これまでは、異次元の生物の様に見ていたから淡々としていられた。
野嶋さんにだけは、何故か親近感を覚えるんだ。多分、恵に聞いた彼女がバイセクシャルであるという部分でそう感じるのかもしれない。
「腹ごしらえをするにはまだ早いけど、何か食べてからにしますか?」
俺が訊ねる。と、彼女は少し首を傾げてから「あー、だったら私、何か作りましょうか?」
そんな事を言う。
またドキリ、とした。
ちょっとヤバいね。
こういうの、口説き文句っぽくて…
けど、野嶋さんはきっとそんなつもりじゃない。彼女の性格がそう言わせてるんだ。
「中谷くんも帰って来たら一緒に食べましょうか。材料だけ買って置いたら、直ぐにできるので。」
にこやかに言いながら手元のバッグを肩に掛けると、俺の返事を待つ。
「あ、そうですね。なら、帰り道にスーパーがあるので。」
俺もそう言うと鞄を手にした。
なんとなく並んで歩くフロアの通路。エレベーターを待つ間、点滅する階の数字に目をやりながら、浮き足立つ感覚を抑え切れずにいた。
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