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26 アルミ箔のオンナ 8
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自分の部屋からノートパソコンを持ってくると、それをテーブルに置いてセッティングした。
前に作りかけた自分用のサンプル帳。商品の規格や使われている施設の名称、そこに新たな単価をプラスしたものを作りたくて。画面を立ち上げて野嶋さんが一区切りつくのを待つ。
「そろそろいいですね。あとは15分位煮込んでいきますから、その間に.....」
そう云うと、テーブルに置かれたパソコンの画面に目をやった。
「ここに、新たな単価を入力して、それが、こっちの見積り書に反映できるようにしたいんだけど」
俺は、早速マウスを掴むと画面のカーソルを移動させながら野嶋さんに云う。
野嶋さんはそれを目で追っていくと、「はい、分かりました。」と言って俺の顔を見返した。
間近で目が合って、一瞬だけど身体が後ろに下がった気がする。それは互いに、ほんの一瞬の事で、すぐに画面を見直すと「……こういう細かい事、ホント、苦手。」と頭を掻いた。
クスッと笑った彼女。
でも、直ぐに腰掛けると、俺からマウスを受け取り「このセルに単価が入るようにすればいいんですね?商品名から拾える様にしましょう。」と言って操作を始める。
彼女の指先を目で追いながら、時折こちらを向く視線に頷いた。
サクサクと関数を入れてしまうと、あっという間に期待通りの表が出来上がる。
「ありがとう、こんなに早く出来るとは・・・」
そうお礼を云うと、「いえいえ、毎日している事ですから。少しだけ早いってだけで、大した事ではないです。あ、そろそろ出来上がるかな?」そう言って鍋の具合を見に行く。
俺はホッと一息をつくと、テーブルの上のパソコンを片付けた。
カレールウを入れたからか、部屋の中にいい香りが充満してくると、俺の腹の虫も騒ぎ出す。
「もうすぐ中谷くんも帰ってきますかね?そうしたら一緒に食べましょうか。」
「ああ、そうだね。.....多分そろそろ.....」
そう云っているうちに、玄関のドアが開く音がした。
「あれ、.......」という声がしたままこちらに来る足音がして、俺と野嶋さんの姿を見つけると一瞬目を丸くする。
「おかえり。」
「おかえりなさい」
「あれ、どうして?」
不思議そうな顔で俺たちを見る恵。なんだかすごく困惑しているようだった。
「あ、今日はパソコンで分からない所を教えて貰ってて、ついでに食事を作ってくれるって云うから.............、恵の帰りを待ってたんだ。」
「..........ああ、そうなんだ?!ビックリした。」
そう言ってネクタイに指を掛けると、恵はバッグを部屋に置きに行った。
ちょっと不機嫌だったかな?
俺は気になって、野嶋さんに「ちょっと待ってて」と云うと恵の部屋へと向かう。
野嶋さんが来る事は伝えていなかった。驚かせようと思った訳じゃなくて、なんとなく言いそびれただけなんだけど。俺は、この前恵が送ってきてもらった事を不愉快と感じたのに、同じ事をしてしまったんだろうか。
ドアを開けて入ると、背中を向けたままの恵が脱いだジャケットを床に落とした。
前に作りかけた自分用のサンプル帳。商品の規格や使われている施設の名称、そこに新たな単価をプラスしたものを作りたくて。画面を立ち上げて野嶋さんが一区切りつくのを待つ。
「そろそろいいですね。あとは15分位煮込んでいきますから、その間に.....」
そう云うと、テーブルに置かれたパソコンの画面に目をやった。
「ここに、新たな単価を入力して、それが、こっちの見積り書に反映できるようにしたいんだけど」
俺は、早速マウスを掴むと画面のカーソルを移動させながら野嶋さんに云う。
野嶋さんはそれを目で追っていくと、「はい、分かりました。」と言って俺の顔を見返した。
間近で目が合って、一瞬だけど身体が後ろに下がった気がする。それは互いに、ほんの一瞬の事で、すぐに画面を見直すと「……こういう細かい事、ホント、苦手。」と頭を掻いた。
クスッと笑った彼女。
でも、直ぐに腰掛けると、俺からマウスを受け取り「このセルに単価が入るようにすればいいんですね?商品名から拾える様にしましょう。」と言って操作を始める。
彼女の指先を目で追いながら、時折こちらを向く視線に頷いた。
サクサクと関数を入れてしまうと、あっという間に期待通りの表が出来上がる。
「ありがとう、こんなに早く出来るとは・・・」
そうお礼を云うと、「いえいえ、毎日している事ですから。少しだけ早いってだけで、大した事ではないです。あ、そろそろ出来上がるかな?」そう言って鍋の具合を見に行く。
俺はホッと一息をつくと、テーブルの上のパソコンを片付けた。
カレールウを入れたからか、部屋の中にいい香りが充満してくると、俺の腹の虫も騒ぎ出す。
「もうすぐ中谷くんも帰ってきますかね?そうしたら一緒に食べましょうか。」
「ああ、そうだね。.....多分そろそろ.....」
そう云っているうちに、玄関のドアが開く音がした。
「あれ、.......」という声がしたままこちらに来る足音がして、俺と野嶋さんの姿を見つけると一瞬目を丸くする。
「おかえり。」
「おかえりなさい」
「あれ、どうして?」
不思議そうな顔で俺たちを見る恵。なんだかすごく困惑しているようだった。
「あ、今日はパソコンで分からない所を教えて貰ってて、ついでに食事を作ってくれるって云うから.............、恵の帰りを待ってたんだ。」
「..........ああ、そうなんだ?!ビックリした。」
そう言ってネクタイに指を掛けると、恵はバッグを部屋に置きに行った。
ちょっと不機嫌だったかな?
俺は気になって、野嶋さんに「ちょっと待ってて」と云うと恵の部屋へと向かう。
野嶋さんが来る事は伝えていなかった。驚かせようと思った訳じゃなくて、なんとなく言いそびれただけなんだけど。俺は、この前恵が送ってきてもらった事を不愉快と感じたのに、同じ事をしてしまったんだろうか。
ドアを開けて入ると、背中を向けたままの恵が脱いだジャケットを床に落とした。
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