2 / 53
02 弱まる磁力1-2
しおりを挟む
この日、俺はどうしても恵に言いたい事があって、昼休憩に表へ来てくれと呼び出す事にした。
かといって、あまりヒトの多い場所では困る。
ビルの間を抜けて北へ行った所に、忘れ去られた様な小さな公園があって、営業の帰りに一服するお気に入りのベンチへ腰掛けると、恵を待つ。
公園だというのに、遊具なんてものはあまり無くて、動物の形をしたムーブメントが並べられているぐらい。だからこそ、なのか、俺の様な営業のサラリーマンが休憩しやすい場所となっている。
俺は恵を待つ間、買ってきた缶コーヒーを開けてちびりちびりと飲んでいた。
そうしながらも、胸の内は穏やかではない。
暫く待つと、向こうの方から恵がやって来た。
紺のスーツを身に纏い、サラサラの黒髪を綺麗に整えて、背丈は俺より少しだけ高い176センチ。顔立ちは爽やかな日本男子、といった所だ。
「ごめん、会議が長引いちゃって。」
そういうと、俺の隣りに一人分の隙間を空けて座る。
…そうだよな、こんな所でくっついて座る訳がない。そのつもりは無かったが、こうして実際に空けられるとチョット凹んだ。
「こっちこそごめん。忙しいのに呼び出して。」
俺は缶コーヒーを両手で挟むと、膝に乗せて少し前屈みになった。
「どうした?家では何も言って無かっただろ?それに、電話じゃダメな話?」
恵は少し体を捻ると俺の顔を覗き込む。
それを視界の端に感じながら、それでも恵の顔は見ずに俺は言った。
「オンナが出来たんなら言ってくれ。」
発した言葉は俺たち二人を包み込むと、冬でもないのに木枯らしが吹き荒れた様に身を縮め、背中に緊張をもたらす。
「……、真琴、………僕、」
「あッ、イィ、やめやめ!」
折角の恵の言葉を俺は遮った。
聞いておいて突然怖くなったんだ。
「変な事言った。仕事の合間に話す事じゃないよな。あはは、…」
そういうと立ち上がって行こうとする。
が、「真琴、……僕達、一緒に居られないのかな?」と恵が俺の手を取って言った。
進む足を止めて、俺は振り返ると恵の顔を見る。
恵は、下から俺を見上げると、少しだけ眉を下げて切なそうな顔をした。
「…わかんない。………それ、俺が聞きたいよ。」
そっと手は離されて、恵をベンチに残したまま俺は歩き出す。
さっきの恵が質問した答えの様に、二人の距離はどんどん離れていった。
かといって、あまりヒトの多い場所では困る。
ビルの間を抜けて北へ行った所に、忘れ去られた様な小さな公園があって、営業の帰りに一服するお気に入りのベンチへ腰掛けると、恵を待つ。
公園だというのに、遊具なんてものはあまり無くて、動物の形をしたムーブメントが並べられているぐらい。だからこそ、なのか、俺の様な営業のサラリーマンが休憩しやすい場所となっている。
俺は恵を待つ間、買ってきた缶コーヒーを開けてちびりちびりと飲んでいた。
そうしながらも、胸の内は穏やかではない。
暫く待つと、向こうの方から恵がやって来た。
紺のスーツを身に纏い、サラサラの黒髪を綺麗に整えて、背丈は俺より少しだけ高い176センチ。顔立ちは爽やかな日本男子、といった所だ。
「ごめん、会議が長引いちゃって。」
そういうと、俺の隣りに一人分の隙間を空けて座る。
…そうだよな、こんな所でくっついて座る訳がない。そのつもりは無かったが、こうして実際に空けられるとチョット凹んだ。
「こっちこそごめん。忙しいのに呼び出して。」
俺は缶コーヒーを両手で挟むと、膝に乗せて少し前屈みになった。
「どうした?家では何も言って無かっただろ?それに、電話じゃダメな話?」
恵は少し体を捻ると俺の顔を覗き込む。
それを視界の端に感じながら、それでも恵の顔は見ずに俺は言った。
「オンナが出来たんなら言ってくれ。」
発した言葉は俺たち二人を包み込むと、冬でもないのに木枯らしが吹き荒れた様に身を縮め、背中に緊張をもたらす。
「……、真琴、………僕、」
「あッ、イィ、やめやめ!」
折角の恵の言葉を俺は遮った。
聞いておいて突然怖くなったんだ。
「変な事言った。仕事の合間に話す事じゃないよな。あはは、…」
そういうと立ち上がって行こうとする。
が、「真琴、……僕達、一緒に居られないのかな?」と恵が俺の手を取って言った。
進む足を止めて、俺は振り返ると恵の顔を見る。
恵は、下から俺を見上げると、少しだけ眉を下げて切なそうな顔をした。
「…わかんない。………それ、俺が聞きたいよ。」
そっと手は離されて、恵をベンチに残したまま俺は歩き出す。
さっきの恵が質問した答えの様に、二人の距離はどんどん離れていった。
10
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる