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11 弱まる磁力 1-11
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普段は気にならない周りの人の会話が、この日は妙に耳に入る。その会話の中に、恵と野嶋さんのモノも入っているからだ。
ガタンゴトンという弾けるような音に混じって時折聞こえる「…どうしてたの?」とか、「…結婚は?」とか、「先月叔母さんを見かけて…」なんて会話。
これって、かなりの知り合い。
叔母さんまで出てくるって、親戚?
頭の中で思い巡らせては、恵と野嶋さんをチラチラと伺う。
駅に到着して人の出入りがある度に、会話を聴き逃してしまい、結局モヤモヤしたまま俺たちの降りる駅に着いた。
「じゃあ、おやすみなさい。」
互いに言い合って、駅のホームに降り立つと、恵は発車する電車を見送る様に眺めている。
ガラスの向こうで、笑顔の野嶋さんを目にすると、俺は隣の恵の顔を見た。
やはり、恵も笑顔を向けていた。
二人の関係を聞いていいものか…。
改札口を出て人通りが少なくなると、俺はようやく恵に切り出した。
「彼女、4月に移動で来たんだけどさ、ひょっとしなくても知り合い、だよな。」
「あ、うん。知り合い、だネ。だった、かな?」
「は?だった、ってどういう意味?」
含みのある言い方をされて気になる。
それって……
「もしかして、元カノ?」
率直に訊いてみたが、答えを知るのが怖くなる。こんなところで再会とか、勘弁してくれ。しかも、この半年お互いに気付いていなかったとか……。ドラマじゃあるまいし。
「…大学時代の友人。ていうか、僕が振られた。」
「は?マジ?恵が振られた!?」
つい大きな声を上げてしまい、慌てて周りを伺った。静かな住宅街に犬の遠吠えが木霊して、俺の声をかき消してくれるとホッとした。
「恥ずかしいな~、今更思い出させるな。」
恵は少し凹んだ様に項垂れると、俺の背中をパシッと軽く叩く。
「ごめん、だってお前、絶対モテそうだから。断られるなんて想像出来なくて。」
本当にそう思った。誠実そうなイケメンで、背も高いし非の打ち所がない。女なら、彼女になりたくて仕方ないんじゃないかな…。
「野嶋さんて、ちょっと変わってるな。恵を振るなんて。」
そう言うと、俺の横にいたはずの恵の足が止まる。
ガタンゴトンという弾けるような音に混じって時折聞こえる「…どうしてたの?」とか、「…結婚は?」とか、「先月叔母さんを見かけて…」なんて会話。
これって、かなりの知り合い。
叔母さんまで出てくるって、親戚?
頭の中で思い巡らせては、恵と野嶋さんをチラチラと伺う。
駅に到着して人の出入りがある度に、会話を聴き逃してしまい、結局モヤモヤしたまま俺たちの降りる駅に着いた。
「じゃあ、おやすみなさい。」
互いに言い合って、駅のホームに降り立つと、恵は発車する電車を見送る様に眺めている。
ガラスの向こうで、笑顔の野嶋さんを目にすると、俺は隣の恵の顔を見た。
やはり、恵も笑顔を向けていた。
二人の関係を聞いていいものか…。
改札口を出て人通りが少なくなると、俺はようやく恵に切り出した。
「彼女、4月に移動で来たんだけどさ、ひょっとしなくても知り合い、だよな。」
「あ、うん。知り合い、だネ。だった、かな?」
「は?だった、ってどういう意味?」
含みのある言い方をされて気になる。
それって……
「もしかして、元カノ?」
率直に訊いてみたが、答えを知るのが怖くなる。こんなところで再会とか、勘弁してくれ。しかも、この半年お互いに気付いていなかったとか……。ドラマじゃあるまいし。
「…大学時代の友人。ていうか、僕が振られた。」
「は?マジ?恵が振られた!?」
つい大きな声を上げてしまい、慌てて周りを伺った。静かな住宅街に犬の遠吠えが木霊して、俺の声をかき消してくれるとホッとした。
「恥ずかしいな~、今更思い出させるな。」
恵は少し凹んだ様に項垂れると、俺の背中をパシッと軽く叩く。
「ごめん、だってお前、絶対モテそうだから。断られるなんて想像出来なくて。」
本当にそう思った。誠実そうなイケメンで、背も高いし非の打ち所がない。女なら、彼女になりたくて仕方ないんじゃないかな…。
「野嶋さんて、ちょっと変わってるな。恵を振るなんて。」
そう言うと、俺の横にいたはずの恵の足が止まる。
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