物言わぬ家

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岬志保は何処へ

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「こんな所で立ち話も出来ないし、何処か入りますか?」と、佐伯薫さえきかおるが言うので、「それもそうですね」と祐二も応える。ドラッグストアの出入口付近で話す内容ではない。

 それならと、商店街にある小さな喫茶店に3人で向かった。
レンガ色の内装に、観葉植物が映えて静かな雰囲気の店内。客は3人以外に年配の男女が4人しか居らず、話し声はピアノの軽やかなメロディに包まれて気にならない。
1番奥のテーブルに着くと、それぞれに飲み物を注文するが、注文した物が来る間、祐二と佐伯はそれぞれに自己紹介などをしていた。

「で、早速ですが、志保さんの事を」
 美乃利が二人の間に割り込む様に言うと、一瞬シンとなる。
「あ、そうだね」と、佐伯は飲みかけのコーヒーカップを置くと携帯を取り出した。

    携帯のメモを見ている様で、画面を見ると「彼女と話したのは年末の飲み会で。正月は実家に帰るのか聞いたんだよ。そしたら、友達と旅行に行くとか言ってたな」と言った。

    祐二は、岬志保の事を知らないので、ただ二人の話を聞いているだけ。手元のカフェオレを何度も口に運ぶしかない。美乃利と佐伯の顔を交互に眺めながら、岬志保の人物像を想像していた。

「先輩は社員寮に入ってたんですけど、そこの同部屋の方と会えますか?」
    美乃利が訊ねると、佐伯は「あー、多分会えると思うけど、明日にならないと連絡つかないから」と言う。
「何処かに出掛けられてますか?」
「うーん、彼女、週末は実家に戻るらしくて、明日の夜に寮へ戻ってくるって」
    そう言うと、佐伯はまたカップのコーヒーをひと口飲む。

「そういえば、先輩、廃墟巡りの動画が好きで、休日は自分も廃墟に行ってたとか」
「あー、そうそう、飲み会の時も言ってたよ。動画にあがってる場所を探して行くらしい。変な趣味だよね、オレは無理だな~」
    二人の会話を聞いていると、変な趣味のある女性だと分かり、祐二はイヤーな予感がしてきた。人気のない廃墟に行くとか、いい事なんかひとつも無さそうなのに。

「最近は怪談系の動画も人気みたいだね。オレの友達もよく観てるよ。廃墟に幽霊出るとか、ヤダねー。なんでわざわざ遭遇しに行くのか……」
    と言ったところで佐伯は身震いした。怖い話は苦手のようだ。祐二も苦手な方で、この先は出来るだけ関わらない様にしようと思うと、美乃利と佐伯で何とかするのだと、この時はそう思っていた。

「ところで、お腹減りませんか?」
    そう聞いたのは祐二。
待ち合わせの時間も遅かったし、まだ自分と美乃利は夕飯を食べていない。佐伯に訊ねると、「オレも、聞こうと思ってたんですよ。まだなら食べに行きますか?」と弾んだ声で応えた。

  
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