物言わぬ家

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その家は

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 山里が、神妙な顔付きで話し始める。
「不思議なっていうのはちょっと言い過ぎだけど、俺たちが行った所は東京の端にある普通の民家で、廃墟にしては人の気配が感じられる家。でもその家の周りには一軒も家が無くて」
「家が無いってどういう事?」
 水野が身を乗り出すと訊ねた。
祐二も美乃利も同じ様に固唾を飲んで話の続きを待つ。

「川岸に雑草の群生する一帯があって、そこにポツンとその家は建ってて。対岸は新興住宅地みたいでずらーっと新しい家が建ってるんだけど、その家の川岸にはその一軒だけ。広さでいったら住宅が10軒以上建つ土地があるのに、ですよ」
 そう言うと、山里は携帯を取り出して写真を見せてくれた。
確かに、画面に映るその家の周りは雑草が伸び放題で、対岸の住宅地とは景色が違いすぎる。

「ここって、一応誰かの家でしょ?勝手に中には入れないんじゃ.....まさか入っちゃったの?」
「いや、俺は止めようって云ったんですけど、.......裏の方に回ったら、勝手口の扉が壊れてて。ドアの隙間から撮影したんですよ」
 水野の問いかけに、山里は肩を竦め乍ら答えた。

「じゃあ、その家に行ったのが志保先輩と撮影した最後って事ですか?」
 美乃利は山里の顔をじっと見つめると訊ねる。
「最後っていうか、.......実は次の日も行きました」
「えっ、同じ場所に?」
「そう、........前の晩に岬さんがその家の事をネットで調べてみるって云ってて。翌日、何か気付いた事があるとかで、もう一度その家に行ったんです」
「気づいた事?山里さんには何か話したの?」と、水野。
 美乃利と山里の話を聞いていたが、好奇心が先だって聞いてみたくなった。

「そこ、十数年前に一家心中があったらしくて、親は亡くなって子供がひとり助かったって言ってました。所謂、いわく付きの家って事ですよね。だから売れずに残ったままだったのかも......。それで、岬さんが中に入って撮影したいって言い出して、俺は気乗りしないから外で見張り役してたんです」
 山里の話を聞いて、祐二も美乃利も背筋が寒くなった。
勝手に家に入るなんて、不法侵入だし、ましてや人がそんな形で亡くなっているんじゃ、オカルト要素満載だと思ってしまうし、岬の行動に驚くばかりだった。

「それで、撮影した画像は見たんですか?ひょっとして幽霊とか映ってたりしませんよね」
 美乃利が恐るおそる訊ねると、山里は「何が映っていたのか、画像は岬さんが編集するからって言って持ち帰ったままです。二日後くらいに電話を入れてみたんですけど、繋がらなくてそのまま」と声のトーンを落とした。テーブルに置いた携帯の画面に映る一軒の家が、やけに不気味に思えて、水野も祐二も美乃利もそれぞれに自分の手をギュッと握り締めていた。

 
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