20 / 60
疑わしいのは
しおりを挟む山里の話では、編集の為に持ち帰った映像があるというが、それの入った機材がどこにあるのか。家族じゃない者が家探しする訳にもいかず、美乃利たちは途方に暮れる。
「岬さんの失踪とその家は関係があるのかしら。帰って来なくなったっていう日と、山里さん達がその家に行った日は同じ日じゃない?」
水野がみんなの顔を見回すと言った。眉をひそめて訝しげな表情のまま、山里の顔を見ると彼は口に手を当てて怯えている様な顔。
急にソワソワし出して「俺はちゃんと寮の近くまで送りましたよ」と言う。
「別に山里さんを疑ってませんけど」と、水野は言って背中を椅子に預けると飲みかけのコーヒーを飲んだ。
祐二と美乃利も、自然と前のめりになっていたので、姿勢を戻すと水を飲む。が、張り詰めた空気は消えていない様だった。
「明日、私たちもその家に行ってみない?岬さんが感じた何かが分かるかもしれないし。山里さん、案内してもらえないかしら」
水野が再び山里の顔を覗き込むと訊ねた。目力が強くて、もはや拒否出来ないと悟ったのか、「分かりました。じゃあ、夕方にでも」と山里は眉を下げて答える。
祐二たちは、明日の集合場所と時間を決めて別れるとそれぞれ帰途につくが、帰りの電車の中で「私、志保先輩のご両親になんて言ったらいいんでしょうか。動画の事や廃墟巡りの事、話しちゃっていいのかどうか」と美乃利が顔を曇らせた。
祐二もそれについてはなんとも言えない。あの山里が何か関係しているのかも、と考えると怖くなった。一見普通の冴えない大学生に見えるが、動画の事で二人の間にいざこざがあったかもしれないし、この先も自分たちが関わっていいものかと心配になる。
「どちらにしても、ご両親にはこっちに来てもらう事になるでしょうね。このまま岬さんが現れなかったら、寮も出なきゃいけないし、会社の方も多分退職って事になると思う。就業規則で、普通は14日間の無断欠勤の場合退職って通達されるからさ。辛い事になるけど、警察にもちゃんと調べてもらわないと」
水野はいつもの様に冷静な物言いで二人に話した。
電車内のざわめく音も、そこだけはかき消された様に静かだった。
祐二は二人と別れて自宅へと帰って行く。途中で夜食を買う為にコンビニに立ち寄ると、そこでまた佐伯がレジに並んでいる所に出くわす。近所に住んでいるからなのか、よく出会うものだと思った。
軽く会釈をして、カゴを手にすると陳列棚を覗きながら歩いて行くが、背後から「こんばんは、今仕事帰りですか」と佐伯の声がして、振り向いた。会計が終わったのだろう、手にした袋を掲げると、「オレも今日は残業で、晩飯はコンビニ弁当ですよ」と苦笑い。
祐二は、「僕は岬さんと動画を撮っていたって人に会いに。美乃利さんと水野さんも一緒ですけどね」と言って笑みを浮かべた。
「ああ、どうでした?何かいい話は聞けましたか?」と佐伯が訊ねるが、コンビニで話せる内容でも無いし、祐二は「一応は。」と言って口をつぐんだ。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる