物言わぬ家

itti(イッチ)

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疑わしいのは

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 山里の話では、編集の為に持ち帰った映像があるというが、それの入った機材がどこにあるのか。家族じゃない者が家探しする訳にもいかず、美乃利たちは途方に暮れる。
「岬さんの失踪とその家は関係があるのかしら。帰って来なくなったっていう日と、山里さん達がその家に行った日は同じ日じゃない?」
 水野がみんなの顔を見回すと言った。眉をひそめて訝しげな表情のまま、山里の顔を見ると彼は口に手を当てて怯えている様な顔。
急にソワソワし出して「俺はちゃんと寮の近くまで送りましたよ」と言う。

「別に山里さんを疑ってませんけど」と、水野は言って背中を椅子に預けると飲みかけのコーヒーを飲んだ。
 祐二と美乃利も、自然と前のめりになっていたので、姿勢を戻すと水を飲む。が、張り詰めた空気は消えていない様だった。
「明日、私たちもその家に行ってみない?岬さんが感じた何かが分かるかもしれないし。山里さん、案内してもらえないかしら」
 水野が再び山里の顔を覗き込むと訊ねた。目力が強くて、もはや拒否出来ないと悟ったのか、「分かりました。じゃあ、夕方にでも」と山里は眉を下げて答える。


 祐二たちは、明日の集合場所と時間を決めて別れるとそれぞれ帰途につくが、帰りの電車の中で「私、志保先輩のご両親になんて言ったらいいんでしょうか。動画の事や廃墟巡りの事、話しちゃっていいのかどうか」と美乃利が顔を曇らせた。
祐二もそれについてはなんとも言えない。あの山里が何か関係しているのかも、と考えると怖くなった。一見普通の冴えない大学生に見えるが、動画の事で二人の間にいざこざがあったかもしれないし、この先も自分たちが関わっていいものかと心配になる。

「どちらにしても、ご両親にはこっちに来てもらう事になるでしょうね。このまま岬さんが現れなかったら、寮も出なきゃいけないし、会社の方も多分退職って事になると思う。就業規則で、普通は14日間の無断欠勤の場合退職って通達されるからさ。辛い事になるけど、警察にもちゃんと調べてもらわないと」
 水野はいつもの様に冷静な物言いで二人に話した。
電車内のざわめく音も、そこだけはかき消された様に静かだった。


 祐二は二人と別れて自宅へと帰って行く。途中で夜食を買う為にコンビニに立ち寄ると、そこでまた佐伯がレジに並んでいる所に出くわす。近所に住んでいるからなのか、よく出会うものだと思った。
軽く会釈をして、カゴを手にすると陳列棚を覗きながら歩いて行くが、背後から「こんばんは、今仕事帰りですか」と佐伯の声がして、振り向いた。会計が終わったのだろう、手にした袋を掲げると、「オレも今日は残業で、晩飯はコンビニ弁当ですよ」と苦笑い。
祐二は、「僕は岬さんと動画を撮っていたって人に会いに。美乃利さんと水野さんも一緒ですけどね」と言って笑みを浮かべた。

「ああ、どうでした?何かいい話は聞けましたか?」と佐伯が訊ねるが、コンビニで話せる内容でも無いし、祐二は「一応は。」と言って口をつぐんだ。



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