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寂れた家に
しおりを挟む翌日、祐二たちは定時に仕事を終えると、佐伯と山里、美乃利を伴って例の家のある地域へと向かった。
「山里くんて東京の人だったんだね。自家用車を持ってるなんて羨ましい」
助手席に座る長身の佐伯は、運転する山里を横目で見ながら言ったが、そう言われても山里は「そうですか?」と飄々とした顔をする。
東京で生まれ育った彼にとっては、家も車も生まれた時からあったわけで、佐伯が思うほど特別な事ではなかった。
「あとどのくらいで着きますか?」と、祐二が訊ねると「まだ2、30分はかかります。先に夕食を済ませてからにしますか?」と山里は言った。この先の事を考えると、腹を満たしておく方がいいと思った。
「そうですね、軽く食事をしてから向かいますか」
「それがいいわね、仕事終わってすぐに来たからお腹空いちゃった」
水野がそう言うので、みんなも頷いて食事の出来る店を探す事にした。
広い通りを走っていると、道路沿いにファミリーレストランが見えてきて、山里の車はそこに入って行く。平日の夜でも結構人は入っていて、少しだけ待つとそれぞれ2組に分かれてテーブルに着いた。
祐二と水野、佐伯が同じテーブルに。美乃利と山里は二人で向かい合わせに座り、年齢が一緒の事もあって学校の話もしている様だった。
注文した食事が運ばれて来ると、それぞれに雑談をしながら食べ進めていき、会計を済ませるとまた車に乗り込んだ。
「聞き忘れてたんだけど、その廃墟はどうやって見つけたの?誰かに聞いたとか?」
水野は疑問に思っていた。特に有名な場所なら他にも行っている配信者がいるだろう。それを知ってわざわざ出かけて行ったのかと思った。
「それが、…….忌み地って分かります?」と、山里。
「忌み地?…..ああ、何となく聞いた事があるわね。昔の処刑場跡とか、因縁のある土地の事でしょ」
水野が後部座席から身を乗り出して答えた。
「俺は初め、そういう場所を巡ってたんですよ、一人で。東京にも池袋とか、有名な場所があるでしょ。そういう場所をコメントで募集したら東京のハズレにもそういった所があるらしくて。それを思い出して岬さんに話したんです」
「彼女なら絶対興味持ちそうね」
「そうなんですよ。それに寮からもそう離れていなかったんで」
「え、そうなの?」
「だから、余計にその家が気になったんだと思います」
山里と水野の会話を静かに聞きながら、祐二はこれから行く廃墟に意識を向けた。
「そろそろ着きます。この川を北に向かって行くと、橋の右側一帯に雑草が生えてる空き地があります。そこに二階建ての一軒家がポツンと見えると思うんですが」
そう言われて前方に目を凝らす。
「あ、……あれがそうかな」と、指をさすと佐伯が言った。
そこに見えたのは、エンジ色の屋根が所々薄く剥げている木造の家。辺りが暗くハッキリとは見えないが、川向こうの新興住宅地の明かりがぼんやりと古い寂れた家を浮かび上がらせていた。
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