23 / 60
寂れた家に
しおりを挟む翌日、祐二たちは定時に仕事を終えると、佐伯と山里、美乃利を伴って例の家のある地域へと向かった。
「山里くんて東京の人だったんだね。自家用車を持ってるなんて羨ましい」
助手席に座る長身の佐伯は、運転する山里を横目で見ながら言ったが、そう言われても山里は「そうですか?」と飄々とした顔をする。
東京で生まれ育った彼にとっては、家も車も生まれた時からあったわけで、佐伯が思うほど特別な事ではなかった。
「あとどのくらいで着きますか?」と、祐二が訊ねると「まだ2、30分はかかります。先に夕食を済ませてからにしますか?」と山里は言った。この先の事を考えると、腹を満たしておく方がいいと思った。
「そうですね、軽く食事をしてから向かいますか」
「それがいいわね、仕事終わってすぐに来たからお腹空いちゃった」
水野がそう言うので、みんなも頷いて食事の出来る店を探す事にした。
広い通りを走っていると、道路沿いにファミリーレストランが見えてきて、山里の車はそこに入って行く。平日の夜でも結構人は入っていて、少しだけ待つとそれぞれ2組に分かれてテーブルに着いた。
祐二と水野、佐伯が同じテーブルに。美乃利と山里は二人で向かい合わせに座り、年齢が一緒の事もあって学校の話もしている様だった。
注文した食事が運ばれて来ると、それぞれに雑談をしながら食べ進めていき、会計を済ませるとまた車に乗り込んだ。
「聞き忘れてたんだけど、その廃墟はどうやって見つけたの?誰かに聞いたとか?」
水野は疑問に思っていた。特に有名な場所なら他にも行っている配信者がいるだろう。それを知ってわざわざ出かけて行ったのかと思った。
「それが、…….忌み地って分かります?」と、山里。
「忌み地?…..ああ、何となく聞いた事があるわね。昔の処刑場跡とか、因縁のある土地の事でしょ」
水野が後部座席から身を乗り出して答えた。
「俺は初め、そういう場所を巡ってたんですよ、一人で。東京にも池袋とか、有名な場所があるでしょ。そういう場所をコメントで募集したら東京のハズレにもそういった所があるらしくて。それを思い出して岬さんに話したんです」
「彼女なら絶対興味持ちそうね」
「そうなんですよ。それに寮からもそう離れていなかったんで」
「え、そうなの?」
「だから、余計にその家が気になったんだと思います」
山里と水野の会話を静かに聞きながら、祐二はこれから行く廃墟に意識を向けた。
「そろそろ着きます。この川を北に向かって行くと、橋の右側一帯に雑草が生えてる空き地があります。そこに二階建ての一軒家がポツンと見えると思うんですが」
そう言われて前方に目を凝らす。
「あ、……あれがそうかな」と、指をさすと佐伯が言った。
そこに見えたのは、エンジ色の屋根が所々薄く剥げている木造の家。辺りが暗くハッキリとは見えないが、川向こうの新興住宅地の明かりがぼんやりと古い寂れた家を浮かび上がらせていた。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる