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食い違う人物像
しおりを挟む翌日、仕事を切り上げると、再び美乃利を伴って佐伯の運転する車で社員寮に向かう祐二と水野。
「まったく、又4人で押し掛けるなんて申し訳ないですよ。菅沼さんは総務部だから良かったけど、営業とかなら断られてました」
「どうしてですか?」と、美乃利は佐伯に訊ねた。
「営業職は取引先に時間を合わせるんで、結構遅くまで拘束されるんだよ。代わりに総務は殆ど定時には帰れる。まあ、年度末なんかは忙しいけどね。オレは打ち合わせが早く終わったんで帰れたって訳」
美乃利に説明すると、佐伯は「奥村さんたちは大丈夫ですか?」と聞いた。
祐二も水野も、最近は定時に仕事を終えているが、職場での立場は肩身が狭い思いをしている。が、美乃利には言えず「まあ、大丈夫ですよ」と笑みを浮かべて言うしかなかった。
「菅沼さんには何て?」と水野が佐伯に聞くと、「岬さんの持ち物を確認したいと」と言った。
「美乃利ちゃんが親御さんから頼まれていると言っておきましたよ。いくら何でも他人の持ち物を家探し出来ないですからね」
佐伯の言う通り、いくら近しい間柄でも、個人の部屋のものを触るとかは許されないだろう。
「え、私頼まれていないんですが」と美乃利が戸惑うと、「大丈夫よ、別に取ったりしないんだから。ちょっと見せてもらうだけ。ご両親には後で報告すればいいでしょ」と水野が言う。悪びれたところがないだけに怖いと思う祐二だった。
菅沼の帰る時間に合わせて寮に着くようにと、祐二たちは前にも来た事のある蕎麦屋で軽く夕食を済ませる事にした。
こじんまりとした店内には若い顔ぶれが目立ち、店主も「今日は若い人ばっかりだ」と目を細めてお茶を運んで来る。
他のテーブルに目をやれば、祐二たちと変わらない年頃の客が数人。スーツを着ているので仕事帰りか、と思うが、ふとその中の一人が佐伯に気づくと「あれ、佐伯さん。こんな所でどうしたんですか?」と声を掛けてきた。
「あれ、本村さん?」と、佐伯も驚いたようで、立ち上がる。
「あ、すいません。彼女は総務部の人で、菅沼さんと同期なんですけど、昨年まで営業部にいたんですよ」
本村という女性に会釈をすると、又腰を下ろした佐伯が言った。
「ホラ、営業って残業も多いから、彼女体調不良で部署を変わったんですよね。あ、そうだ、岬さんの事とか知っているかも」
そう言うと、本村という女性のいる席に向かう。
佐伯が聞いている内容が、祐二たちにも聞こえてくると、二人の話に耳を傾けた。
「岬さんは快活な女性で、言いたい事はハッキリ言う性格だったから、好き嫌いが分かれるかな。私は好きでしたよ、服の趣味も合うし」
「え、服の趣味も?」
「ええ、結構派手な色が好きで、バッグとかはブランド物だったし、羨ましいなって」
「え、派手な服とか着てたっけ?ダーク系ばっかりじゃ?」
「えー、派手でしたよ。通勤服とか見た事ないですか?インテリアとかも華やかな色がいいって、カーテンを派手な色合いにしたら安眠できなくて困ったって笑ってました。彼女、無断欠勤しているんですってね。どうしたんでしょうか」
そこまで話してくれると、注文した蕎麦のセットが運ばれてきて、佐伯もありがとう、と言うと祐二たちの席に戻ってきた。
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