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預けた訳は
しおりを挟む祐二たちが蕎麦を食べていると、先に食べ終わって帰る様子の本村が佐伯の所にやって来た。
「そういえば、私岬さんから預かっている物があるんですけど、連絡が付かないしどうしたらいいものかと」
そう言うと困った表情で佐伯の顔を見た。
「預かっているって、どんな物です?」
「それが、古いぬいぐるみとビデオカメラみたいな。小型ので、よく動画配信している人が持ってるやつ。取りに来る迄誰にも言わないでって言われたんだけど、こんなに長く休んでいるんじゃ返しようもないし、なんだか恐くなっちゃって」
本村は小さな声でそう言った。
「いつ預かったんですか?」
「えっと、もう10日ぐらい前?いや、1週間前かな、ごめんなさい曖昧な記憶で。夜遅く急にアパートに来て渡されたんで、何がなんだか分からずにそのまま持ってました」
本村の話を聞いて、祐二たちは一斉に互いの顔を見た。みんな目を大きく見開いたまま、驚きの表情をしている。一瞬言葉が出て来なくて、本村に変な顔をされると、佐伯が慌てて「それ、オレが預かってもいいかな?」と訊いた。
「いいですよ。返したかったし、なんか持ってたら嫌な気分になるんで。今から取りに来てもらえますか?」
「ああ、家は近いのかな?」
「ええ、寮からも近いんで」
「じゃあ、車で送っていくよ。ちょっとだけ待ってて、すぐに食べてしまうからさ」
「はい、じゃあ待ってます」
本村は空いている席に座ると佐伯たちが食べ終わるのを待った。
祐二は急いで蕎麦を啜ると、水野も佐伯も食べ終えて美乃利を待つ。
「もう、いいです。行きましょう」と、美乃利は食欲が無くなったのか、少し残して立ち上がった。
会計を済ませて外に出ると、佐伯の車に乗り込んで本村のアパートに向かう。
「預かり物の事は誰にも言ってないんですか?」
祐二が訊ねると、本村は「はい、だって取りに来る迄言わないでっていうから。菅沼さんに話して部屋に戻してもらおうかと思ったんですけど、それもダメかなって。佐伯さんなら岬さんと同じ北海道出身だし、センパイだから頼ってもいいかなと思って」と苦笑いした。
「いいよ、頼ってくれて。オレたち岬さんの事探してて、会社じゃ言えないけど、行方不明になってるんだよね。だから少しでも手掛かりがあると助かる。この美乃利さんは、わざわざ北海道から探しに来たんだ」
ハンドルを切りながら、助手席の本村に話す佐伯だった。
「えっ、そうなんですか?じゃあ、やっぱり私が持ってなくて良かったぁ。なんでぬいぐるみなんて持って来たんでしょうね。すごく古そうだし、ビデオカメラに何が映ってるのか不気味ー。...あ、そこの角を左に曲がってすぐのアパートです。白い塀のところの」
本村に言われて、佐伯は角を曲がるとアパートの前で車を停車する。
「じゃあ、すぐに取ってきます」
そう言うと、車から降りて足早に部屋に向かった本村だった。
祐二たちはじっと固唾を飲んで戻って来るのを待つ。岬がどうしてぬいぐるみとカメラを預けたのか、分かった事は、山里の車を降りてから本村の部屋を訪ねて来て、何かの為に預かってもらったという事。どうして部屋に持ち帰らなかったのか。そして、本村のアパートを後にした岬は何処に向かったのか。
益々謎が深まるばかりだった。
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